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新世紀にむかって −規模から質へ−

週刊「病院新聞」(病院新聞社) 2001年1月11日号
初春を迎えて(所感・随想)


 人類にとって大きな進歩の100年となったと考えられてきた20世紀。大量生産、大量消費の時代からグローバリゼーションと情報の時代へとそのキーワードも変わってきた。医療の世界では、抗生物質の創薬によって感染症に打ち勝ったように見えた。また、情報技術は体内、さらには遺伝子のレベルへと今まで見えなかった世界を見せてくれさえした。しかし、環境破壊、資源の枯渇、新しい感染症の勃興と将来の人類にとって、必ずしも進歩の100年であったかどうか定かではない。

 また、直近のバブル崩壊後の10年間を省みると、不況不況といっても国民所得が下がったわけではない。海外への生産拠点の移設によって空洞化といっても失業者があふれているわけではない。国の富の源泉が、また産業の流れがサービス業へと移ってきたことも明らかなことである。

 医療は本来、サービス業である。われわれは医療サービスと共に、安全、安心というサービスも提供してきたはずである。しかし、日本における産業構造と同様、医療は人間修理工場よろしくあたかも製造業のように規模を拡大してきた。その急拡大のなかで、組織的ひずみができてきたことも事実であろう。それが、昨今の医療過誤・事故の増加と国民の医療への不信感につながっているようにも思えてならない。また、国民医療費の増大を招いたのも右肩上がりであった日本経済同様の産業構造にあったことに起因するのであろう。

 すべてにおいて規模から質の時代へと移行するであろう21世紀。われわれは、失いかけたサービスに対する誇りを回復しなければならない。護送船団方式と呼ばれた悪平等から抜け出し、良好なサービスに対しては、充当する費用の負担を求め、責任あるサービスを提供しなければならない。

 われわれは病院経営者は、その時々のイノベーションに果敢に挑戦してきた。IT技術に裏打ちされたSPD、オーダリングシステム、電子カルテシステムをはじめ、TQC活動、医療機能評価、ISO認証、ビジネスプロセスリエンジニアリング、ナレッジマネジメント、カスタマーリレイションシップマネジメント(CRM)などといった管理手法を導入してきた。時流に乗っただけの一時的なものもあったことだろう。しかし、そのなかで複雑な組織では導入は阻まれ、シンプルな組織では合理性をもって導入すれば円滑にことがすすむことを学んだ。
 今後も変化を求めていかなければならない。そのためには、組織の役割・使命を明確にした上で、単純化し風通しをよくする必要があろう。
 21世紀。医療機関は規模の発展の時代から、質とそれを担保する組織の確立の時代に入っていくものと思われてならない。


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