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ニューフロンティアを求めて

週刊「病院新聞」(病院新聞社) 2003年1月1日号
平成15年を迎えて(年頭所感)


 世の中デフレの時代だ。物の値段が下がり、給与所得も下がろうとしている。医療費そのものも、自己負担増という受益者にとっては「値上がり」ベクトルがかかったものの、4月の診療報酬改定で下がってしまった。

 100円ショップやユニクロ、電化製品などデフレを引っ張ってきたものは何れも、海外の安い労働力をはじめとしたコスト削減と画一的大量生産によるものであった。一方、ハイクオリティーを標榜するホテルやブランドショップは高い値段をとりデフレとは関係がない。五つ星ホテルは、徹底した個別対応によって顧客の満足を追求し、ブランドショップもまた高級感と希少性ともに、質での安心感で顧客に迫っているのである。

 顧客は医療においても、大量生産と画一的なサービスを求めるのであろうか?個別対応とブランドを求めていないのであろうか?医療は今後テーラーメイド医療へと行くという。それは個人の遺伝子やタンパクの発現によって、個人対応の予防・治療を行う医療であるという。ただ、その前に個人のニーズに応え、それを満足感に変えていくという個別の対応こそが医療の質にかかわってくることも忘れてはならない。

 個への対応、質の確保と医療費のデフレ…この二律背反のなかで、いかに対応していくかは、一般企業以上に厳しい問題となってきた。われわれは今まで以上に知恵を絞らなくてはならない時代を迎えようとしている。

 人類は、歴史上新たな開拓地(ニューフロンティア)を求めて、その富により進歩してきた。アフリカであり、アメリカ大陸であり、近くはアジアの植民地であった。その後、アポロ計画など月にフロンティアを求めたものの、その計画過程でITによるサーバースペースという大きなニューフロンティアが見出され、世界はそこで新たの富を創出している状態であると理解できよう。

 今後、デフレ下における医療費拡大の望みは現実的には厳しい状態にあることは言うまでもない。われわれ医療にとっての、新たな富を創出するニューフロンティアが存在するのか?平成12年から施行された介護保険制度は一つの場を提供してくれた。また、新たなニューフロンティアとしてサイバースペースが存在する。その両者を継げる取り組みとして当法人では32の介護保険事業部門をオンラインで管理するコールセンターを立ち上げてきた。しかし、一般的にITから収益を得るモデルは材料や薬品などの仕入れ、コスト・在庫管理面に絞られる。その他の安全対策や情報共有、情報開示は質の面のみの改善に伴うものであるといえよう。

 これから私どもはニューフロンティアを求めて新たな航海に出る必要がある。それは病気を作らない予防医学・健康創出であり、医療関連サービスへの進出であろう。病院という安心のブランドを核として、新たな事業を捜し求めなければならない時代に入ったといえよう。


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