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HSR

週刊「病院新聞」(病院新聞社) 2004年1月15日号
平成16年初春を迎えて(所感随想)


 企業の社会的責任という言葉が最近巷を騒がせている。Corporate Social Responsibility (CSR) という。どんなに好業績の企業であっても、環境への配慮を欠いたり、クレーム処理などの場で顧客対応に誠実さを欠いたりすると、それだけでCSRが低下し、社会からの格付けが下がってしまう例は枚挙に遑がない。

 いま医療機関が目指すべき方向は、国が示すように1)患者の安全、2)医療の質の向上と信頼の確保、3)証拠に基づく医療( EBM )への取組みであることはいうまでもない。われわれは、医療費削減という逆風の中で自らの痛みを伴いながらも、これらの実現に向かって進んでいかなければならないのである。

 私はそれに加えて、CSRならぬ病院の社会的責任HSR( Hospital Social Responsibility )が求められていると思う。企業に課せられているCSRでは原則的なものとして「規範の遵守」、「製品(病院ではアウトカム)・サービスの提供」、「収益の確保と納税」、「株主利益の保護」であるという。これを医療機関に当てはめてみても、株式会社の責務としての「株主利益の保護」を除いてまったく同じものであると考えることができる。

 さらに、CSRを拡大していったときに挙げられる「積極的な情報開示と双方向コミュニケーション」、「誠実な顧客対応」は患者や紹介いただいた機関に対してのパートナーシップを醸成するとともに、安全に対しての保障となるだろう。「環境への配慮」は、当然資源を消費するものとしての大きな責任を果たすものとなるだろう。「社員のキャリアアップ支援、家庭との両立への配慮」「社会活動への関与」は、日本を、あるいは世界を対象とする上場企業以上に、地域密着型である医療機関だからこそ取り組まなければならないこととなるだろう。

 人間は「人の間」と書き、たった一人では生きることができない宿命にある。医療機関も地域に根を据えてこそ生きていくことができるものであろう。われわれは、絶えずHSRを反芻しながら前へ進まなければならいないだろう。


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