My Articles

二つの病院

週刊「病院新聞」(病院新聞社) 2002年7月18日号
平成14年盛夏(所感・随想)


 4月の末に、北米へ行ってきた。いわゆる有名病院ではない、日本では知られていない二つの病院を縁あって訪問した。

 一つはカナダオンタリオ州Tillsonburgのコミュニティーホスピタル。日本で見る地図に載っていない人口4万のタバコ農場、クリスマスツリー農場、高麗人参農場を中心とした田舎町の基幹病院である。4月末だというのにまだ雪がちらつく中、この病院においては名誉ある始めての日本人ドクターの訪問である。決して新しい病院ではない、しかし清潔に整理されている。日本の人口4万人の町の病院と比べるほどのことはない。100床に満たない病院にはERは存在するが、常勤の外科医や内視鏡医はいない。週1回の非常勤である。CCUは存在するが心臓カテーテル検査などはとんでもない、いわゆるデイケア中心の病院である。しかし、医療は公的保険でカバーされ、民度も高い。住民はこの病院の機能にそれなりに納得している。重症患者はヘリや救急車で約40Km離れたLondonの大学病院まで運ぶという。それに対して誰も不満は持っていない。

 もう一つは、ゴルフで有名なぺブルビーチを有するアメリカの高級リゾート地、カルフォルニア州Montereyのコミュニティーホスピタル。周辺には1軒10億円、20億円する美しい家が立ち並ぶ。100数十床の病院には200人以上の医者がいる。病床数よりも医者の数が多いのである。全室個室、病院の中は清潔観があふれ、大きな天窓からは光が満ち、廊下にはおびただしい高級絵画が飾られている。カフェテリアに続く大きなガラス窓からもカルフォルニアの太陽と美しい花々が心を癒す。先端医療機器がならび(とは言っても日本の大病院の標準クラス)、外来待ち時間などというものは考える必要がないくらいゆったりしている。比較的裕福な部類に属する地元民は言う。「あの病院は高いので、とても受診できない。隣町の総合病院を受診する」と。

 どちらの住民が幸せか・・・?どちらよりも日本人が一番幸せだと思う。安い医療費で最高の治療を。この制度が今崩れようとしている。


My Articles 目次に戻る