医療経営Archives

医薬品市場の閉鎖性は日本国家の恥では・・・

Hot Talk:グレゴリー・クラーク(多摩大学学長)
月刊「ばんぶう」(日本医療企画) 1997年5月号より

registration date: 1997.5.7


(内容の一部)

−今の日本の医療について、何か問題と感じていることは?

クラーク よく言われることですが、非常に閉鎖的です。なかでも、医薬品業界や薬価基準制度、薬に使い方など、薬を取り巻く環境について、強くそう思います。新薬の多くは外国の企業で開発され、日本の製薬企業が自らの努力で創出したものではない。それを、なぜ薬価制度で保護するのでしょうか。以前から、アメリカをはじめとする諸外国が、日本の医薬品市場の閉鎖性について指摘しつづけてきたのに、日本政府は何もしなかった。そのことをマスコミもあまり批判しなかった。なぜ日本政府は反省しないのか。国家の恥でしょう。
一方、私は日本で2〜3回入院したことがあるんですが、その経験から言えば、お医者さんや看護婦さんたちは外国に比べて熱心に対応してくれました。給料も決して高くないなかで、多くの医療従事者はまじめに働いていると思います。

−医療を取り巻く環境の閉鎖性を是正するのは、行政の責任でしょうか?

クラーク いやむしろ、政治家の責任だと思います。とはいっても、橋本さんや小泉さんも、岡光事件で逮捕・起訴された小山氏と関係のある団体から献金をもらっていたというのですから、政治腐敗は根深いですね。
小山氏はたくさん特別養護老人ホームをつくっていたようですが、老人ホームというものにも私は疑問を感じています。老人は自助が基本で、それができなければ、家族が面倒を見る責任があります。しかし現状では、家族が責任を負えないから、老人に対する社会的なサービスにお金がかかっている。子供に自分の老後を見てもらいたいと思うのなら、子供をもっと増やすべきです。
この問題を解決するヒントとして、フランスで導入されている回収制度があります。それは、自分の子供が老後の面道を見てくれなければ財産を全部国に変換するというものです。こうした制度を導入すれば、高齢化と少子化という二つの問題が解決に向かうのではないでしょうか。


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