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日米価格差50%減らせる

承認迅速化など改革を

米の医療機器団体・HIMAロジンスキー氏に聞く
( 日経産業新聞 1998年7月22日号)より

registration date: 1998.7.24


(記事)

心臓ペースメーカーやカテーテルなど、国内販売品の多くを輸入品に頼っている医療機器の内外価格差が問題になっている。日米の内外価格差は2〜3倍に上るとの統計もある。米医療機器メーカー約800社の業界団体である米国医療機器製造業協会(HIMA)のエドワード・ロジンスキー国際戦略・分析担当副会長は、「日米の内外価格差は50%以上縮小できる」と主張する。内外価格差解消への提言などを聞いた。


――米国企業は、世界第2位の医療機器市場である日本向けには、他国への輸出に比べて価格を釣り上げているとの指摘もあるが。

「日本貿易振興会(JETRO)の報告では、ペースメーカーなどの内外価格差が2〜3倍としているが、末端価格がベースになっており実態を反映していない」
「米国製品は商品が港についた時点では適正な価格。日本の複雑な流通経路でかさむ物流費や、委託販売制による在庫管理費、技術者の手術立ち会いなどでコストが膨らんでいく。日本独特の商慣行で価格が上がっている。内外価格差は日本の制度に起因する面が多い点を強調したい」

――円安の影響も大きいか。

「米国から日本への医療機器輸出は、ドル高・円安の影響で今年はかなり落ち込んでいる。98年1−4月の輸出額は、97年の同じ時期に比べて8%減の7億4千8百万ドルだった。これまでは二ケタ台の順調な伸びが続いてきたが、一転、減速している。一方、日本からの対米医療機器輸出は年率10%伸びている。米国企業が日本で楽なビジネスをしているというのは見当違いだ」

――内外価格差を解消するための提言があるとか。

「3年間で日米の内外価格差を50%以上縮小する方法として、7つ提案したい。それは、

  1. 医療機器の承認の迅速化
  2. 医療機器の公定価格を機能ごとに設定してメーカー間の競争を促す
  3. 病院の専門化
  4. 医療機器の共同購入
  5. 医療機器卸による納品方法の改善
  6. 卸と病院の長期契約の促進
  7. 医療政策の迅速な改革

―だ」
「7つに共通するキーワードは規制緩和だ。日本政府は医療費抑制策として、医療機器やサービスの個別の公定価格を下げようとしているが、これでは効き目は少ない。もっと大きな構図に焦点を当て、医療システムそのものを改革しなくてはならない」
「たとえば車を購入する時のことを考えてほしい。個別の部品を一つ一つ買って組み立てたとしたら、最終製品を1台買うより値段は3倍ぐらいに上がる。それと同じで、多岐にわたる医療機器やサービスをこまごまと買っている病院の実態が変わらない限り、公定価格を下げるという対症療法では、大きなコスト削減効果は見込めない」

(聞き手:杉本晶子氏)

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