公的介護保険は過渡的な対処法
-−財政面では、今検討されている介護保険が設立されれば、その後で、医療保険制度のあり方はさらに厳しく問われてくるでしょうね。
広井 そうです。今、私が気になっているのは、介護保険に論議が集中しすぎてしまって、本来、既存の制度全体の改革を考えるべき時なのに医療保険制度のビジョンが見えてこない点です。それは供給システムの方のビジョンも同様です。
私は、介護保険に関する議論は過渡的なものにすぎないと思っています。老人医療費8兆円のうち1兆円強が介護の形で抜けても、医療保険制度の抱える構造的な問題は何ら解消されないからです。医療と福祉を含めた制度全体の行き着く先を議論することが重要でしょう。
そうした観点に立てば、大別して二つの道しかないんじゃないかと思っています。一つは老人の医療福祉はすべて公費で賄う税法式にしてしまう。そして、残りの各保険制度は、老人保健への拠出金から開放し、保険原理を純化させる仕組みにする。
無一つは、いわばドイツ型のやり方で、健保組合などが退職者の面倒も見て、やはり保険原理を徹底させる。かつ、低所得者に関しては公費を入れた別の制度でカバーする。介護保険を作っても老人保健制度の矛盾は何ら解決されないと多くの人々が気づき始めています。本当はその先の議論をしないと意味がないわけです。
平成6年度主要保険制度の決算状況(億円)
政府管掌 | 組合管掌 | 国保(市町村) | |
収入 | 63,843 | 53,854 | 70,961 |
支出 | 66,387 | 54,669 | 68,384 |
内老人保健拠出金 | 16,118 | 13,309 | 17,143 |
収支差額 | -2,544 | -815 | -1,360 |