国立病院の運営費の補助金には
1) 一般会計からの「医療施設・設備運営費等補助金」「公的病院特殊診療部門運営費」
2) 国立病院特別会計からの研究費補助
などがある。また、国立病院の場合は、資金運用部より財政投融資として、設備整備費・設備(高額医療機器など)整備費の借り入れが認められており、しかもその残高は増加傾向にあり、平成6年度では426億円にも達している。融資残高の増加は、返済を上回る借り入れの存在を意味し、形式的には借入金であっても、実質的には補助金の増加とみなすことができる。以上を合計すると、国から年間約3,000億円の財政的支援を受けている。
補助金の種類 |
病院 |
療養所 |
合計 |
病院経営費または療養所経営費 |
99,410,454 |
121,239,574 |
220,650,028 |
施設整備・設備整備費 |
9,615,025 |
5,473,747 |
15,088,772 |
資金運用部からの借入金残高 |
42,600,000 |
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合計 |
273,338,800 |
公立病院への運営費に対する補助金の合計額は、国立病院へのそれをはるかに上回り、約5,000億円に達しており、施設・設備整備費も約1,800億円に達している。また、企業債も、補助金によって返還されることから、結局は、一般会計からの補助金とみなすことができる。これを加えると、公立病院には年間1兆円を超える公的補助が交付されていることになる。
運営費に対する補助等 |
国庫(県)補助金 |
11,410,535 |
他会計繰入金 |
524,518,631 |
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小計(A) |
535,929,166 |
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施設整備・設備整備等に対する補助金 |
他会計出資金 |
74,931,102 |
他会計負担金 |
37,913,975 |
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他会計借入金 |
41,667,249 |
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他会計補助金 |
11,465,448 |
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国・県補助金 |
11,571,361 |
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小計(B) |
177,549,135 |
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合計 (A)+(B) |
713,478,301 |
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企業債 |
346,124,729 |
これほどの補助金を受けながらも、なおかつ、赤字経営の国公立病院が存在するという事実は、不採算医療を考慮に入れたとしても、現行の社会保険診療報酬が病院運営の確保はもとより、施設・設備の改良等にはまったく及ばないことを物語っている。
そして、このような状況の中で、民間病院が必死の努力を続けて経営しているのに対し、国公立病院のみが多額の補助金によって保護され、しかも、それによって民間の経営を圧迫しているという事実は、目下の日本経済において支配的な「市場原理」「規制緩和による公平な競争原理の確立」などの視点から見ると、まったく不合理の一言に尽きる。
昨今、政府の「規制緩和推進委員会」が「医療における規制を緩和し、医療に競争原理を導入すべきである」と提言している。しかし、競争原理を基底から阻害するような条件、つまり、公的助成制度が生み出す不平等を放置したままの状況下では、その提言はナンセンス以外の何物でもない。