オーダリングシステムにおける職能の変化

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めりはりの時代
−オーダリングシステムにおける職能の変化−

月刊「医経研タイムス」(株式会社コンタックス発行) 1998年7月号
医事職員のための職能拡大シリーズ<第6回>
Career Development Power


医経研7月号 さる5月22日、厚生省は医療保険福祉審議会に1998年度の国民医療費が前年比1.1%(約3000億円)減の28兆8000億円になるという推計を報告した。あくまでも推計であり、「とらぬタヌキの・・・」の感はあるが、いずれにしても毎年ほぼ1兆円のペースで伸びてきた国民医療費の推移が、日本経済同様に右肩上がりの成長の時代から決別し、マイナス成長に陥るということになる。医療費を収入の原資とするわれわれ医療機関は構造不況業種へ転落することになるかもしれない。

こうした背景の中、医療機関の管理運営にあたっては徹底した業務の見直しが図られる必要があろう。従来のあたり前とされてきた業務を継続しているだけでよいか?業務の内容を変えることは誰しも抵抗はある。しかし、医療機関の生き残り、いや勝ち残りのためには、もう一度ゼロから業務の見直しが必要となろう。いわば、リエンジニアリングの発想が必要とされているわけである。

そういった意味では、オーダリングシステム導入はひとつの大きなターニングポイントとなり得ると思われる。従来のシステムを継承しただけのオーダリングシステムの失敗事例は枚挙にいとまない。このシステムの導入成功のカギは業務の見直しにかかっているといっても過言ではない。システムはその構築に多大なる汗が必要とされる。しかし、一度システムを構築したならば、その運用には多くの省力化が図れることとなると思う。

具体的に、当院は一般454床の急性期病院である。外来患者は1日約1,000名である。医事課常勤職員として41名、非常勤職員として4名が勤務している。従来は、全医事課職員のレベルアップ、均質化に腐心した。しかし、システムの導入と共に、職能の「めりはり」が発生してきた。システムそのものの仕組みに関与し、またレセプト監査に携わる第1グループと、各外来診療科、各病棟の現場にて、医師やパラメディカルにより発生源入力されたオーダーデータと実施データの監査、会計処理する第2グループ、そして、会計にて金銭の授受をする第3グループである。

第1グループは高いレベルを要求され、ベテラン職員が配置される。ここでは、請求業務やシステムの開発・維持の他に、コンピューターに格納されたデータを各種経営データに変換・加工する。コンピューターは、情報の蓄積、検索、抽出、さらに並び替えに優れているという特性がある。これにより、従来の患者を取り巻くカルテを含めたさまざまな独立したファイルは必要なく、患者にかかわるすべての職種が自分にかかわる情報を無作為に格納(インプット)していく。そして、その共有情報の中から自分にとって必要な情報のみを必要な時に、取り出し(アウトプット)、ファイル化していく。この考え方から、アウトプットの切り口により、たとえば各診療科における原価率の算出や材料費・薬剤費の推移を容易に算出可能となった。さらに、会計データの加工により、時間という軸に立った「何月何分何時現在の、各科外来の項目別売り上げ状況」が把握でき、生産性に見合った時間軸による人員シフトの管理が可能となった。

第2のグループの外来部門は、各科受付における接遇と共に、オペレーターとしてオーダー、実施情報を処理する。コンピューター処理は定型的なものであり、システムにより自動的に計算され、会計処理が成される。接遇重視の部門といえよう。

第3のグループは会計における金銭の授受だけであるといってよい。当院では各科外来終了時点ですでに、システムにより会計処理は短時間で終了しており、会計前の待ち時間はゼロである。したがって、パートタイマーに移管していく部門となる。

システムの導入は決して人員削減にはつながらないと思う。あくまでも病院はサービス業であり、サービスの基本は「ヒトとヒトとのふれあい」であると思われる。しかしながら、システムにより医事課職員における職能の「めりはり」をつけることが出来、部門毎の職員のMission(使命)を明確にすることができるようになっていくと思われる。


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