未来予想図

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将来の病院像と医師の役割

月刊「JAMIC JOURNAL」(日本医療情報センター) 1997年10月号・200号記念特集
Report医療未来予想図
10年後、医療は新たな道を歩いているか より


COLUMN

ジャミック200号 将来の病院像ということで、規制緩和と情報公開という二つの軸について述べてみたいと思います。政府も強力に(?)進める規制緩和は、とりもなおさず自由競争の時代ということになります。この自由競争のもと、世の中の身のまわりでで変わったことをあげてみますと、酒屋は個人商店からフランチャイズ・チェーンのコンビニエンスストアへ。風呂屋は公的資金をもとにした健康増進施設、農業振興施設などの名の公的浴場の建設ラッシュにより廃業、一部で巨大化したスーパー銭湯。ガソリンスタンドは価格競争と本業外の米販売に。

ここで5つのキーワードが出てきます。つまり、フランチャイズ、廃業、巨大化、価格競争、本業外です。今後日本版DRGや薬価制度の改革など定額制にシフトしていく医療費抑制政策のもと、病院経営においてもそのままこの5つのキーワードが将来像として見据えるべき問題となってくるのではないでしょうか。また、自由競争となる以上、医療福祉の分野に存在する様々な補助金のカットは財政再建のなかで当然の流れであることもつけ加えたいと思います。

一方、医師の役割としては、情報公開が大きな軸になるでしょう。レセプト公開に始まって、カルテ公開、さらにICカードや地域ネットワークの構築が進むでしょう。ここには医師間、医療機関間の情報の共有化とともに医師と患者間の情報の共有化という問題があります。それに伴って、診療内容は標準化され、個々の医師の裁量権は縮小されてくるだろうと考えます。また、患者は、自分の治療を選択し、責任を持つ形となるでしょう。医師は診療データの整理をはじめ、「説明と同意」のために患者情報・医学情報をきちんと整理し、わかりやすく、しかも的確に提示する必要性が今以上に求められてくるようになるでしょう。この前提として、患者に見せる側の責任も存在しますが、見る側の責任、つまり、腹をくくる態度を患者側に要求すべきでしょうし、社会のコンセンサスの形成が必要になると思います。


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