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さよならCS 
    −不平等の時代−

日刊医療「Japan Medicine」(株式会社じほう) No.41・2000年6月1日号
Editorial


   CS(顧客満足、customer satisfaction)が取りただされて久しい。すべてのお客様にサービスや製品(医療においては治療結果)を満足していただくために企業も病院も多くの努力と資源を投入してきた。しかし、この考え方はあたかも消費者者や生活者のことを考えているようだが、重心はまだ提供者側にあるように思われる。

   最近の企業経営の世界ではCRM (customer relationship management)というトレンドが注目されている。これは「顧客の再定義をし顧客の期待値にあった(時に期待値を超えて)ビジネス展開を企業全体で行う思想」(野口吉昭編、「CRM戦略のノウハウ・ドゥハウ」、PHP研究所より)と定義される。すなわち、本当に顧客(患者、利用者)に重心をおくためには、あきらめる顧客やお引き取りいただく顧客、ほどほどのお付き合いをする顧客がいてもいいということになる。つまりすべての顧客に最高のサービスは提供できないと認識しなければならない。そして、そのためには、どの顧客が自院にとって重要かを再定義する必要があろう。

   病院にとっての「お得意様」と「一元さん」を考えてみたい。お得意様とは単に病院を選んでいただいた以上に、病院を選びつづけていただいた患者である。すなわち、病院に対して permission をくれた患者である。これらお得意様に対しては裏切ることなく医療、福祉、介護のみならず物販などまでにIT(information technology)技術を駆使して徹底的にサービスを提供し、同時に見返りも期待する戦略が重要になってこよう。

   おりしも4月に行われた診療報酬改定で示された急性期病院の生き残りへの道は、紹介率と在院日数、入外比率ということになった。このうち、紹介率の算定は(紹介患者+救急車搬入患者)/新患数という数式による。紹介率のアップのためには紹介状持参者の増患という切り口のほかに一元さん(=新患)の抑制ということになるかもしれない。病院を渡り歩くドクターショッピング患者は必要ない。まさに、不平等、差別化が今後のキーワードのように思われる。


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