医療経営Archives

一律扱い見直し必要
経済格差認め応分の負担

柏木哲夫著(日本経済新聞1996年7月13日号)より

registration date: 1996.8.28


(前略)

高齢化社会では社会福祉制度の維持のために巨額な財源が必要だが、これを少数の現役世代にすべて負担させることは無理であろう。
今後も福祉水準を保っていくためには社会的弱者という高齢者のイメージを変える必要性がある。経済的に恵まれない高齢者世帯、特に単身世帯も増えると予想されるが、同時に健康で経済的にも裕福な高齢者層もまた増加する。高齢者をすべて同一に扱うのではなく経済的に格差を認めつつ応分の負担をするような政策が重要になってくる。
高齢者が家族に面倒を見てもらう(自助努力型)のか、政府の施策に頼る(政府依存型)のかは、重要な国民の選択になる。前者の例は米国で国民負担率は36.8%、後者の例はスウェーデンで74.3%。日本は37.5%である。

今、介護保険が話題になっている。基本的な国民性としては「自助努力型」を望む日本人が超高齢化社会に対処するため「政府依存型」をとらざるを得なくなっているのが現状であろう。政府がどの程度の公的サービスを提供し、どの程度の負担を国民に求めるか、一人一人がしっかりと見つめ、それぞれの場で発言していく必要がある。明日の日本で老いていくのはわれわれ自身なのだから。

(かしわぎ ・てつお)大阪大学人間科学部教授


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