Medical Management 1998年1月号今年は、診療報酬改訂の年。今までにないマイナス改訂が予想され、またもや医療界にとって厳しい年となりそうだ。しかし、国民にとって「住みやすい国」というのがどのような国なのか。安心して医療・福祉が供給される国なのか?役人が多く、また公会堂や道路が整備された国なのか?原点に返って考えていただきたいと思う。将来の安心がなければ、われわれ国民はどんなに低金利であっても、金は貯蓄に回す。景気回復のための消費の拡大はのぞめそうにはない。
今回、情報化のお話をする前に、今後の医療費の動向について「おさらい」をしておく。
これらの国側の方針と、日本医師会、各病院団体や製薬協などとのつばぜり合いが、この1、2ヶ月続いていくものと思われる。しかし、冷静に現実を見つめれば、少なくとも薬価引き下げ、材料費引き下げ、長期入院に対する入院費逓減制は、必ず今春の改定で実施されるように思う。この引き下げ分が技術料に反映されるか、反映されずにそのまま削減となるのかどうかが鍵になってくるように思う。
すなわち、患者増というマーケッティング的発想から決別し、いかに同じ効果を低コストで成し遂げるかといったコスト管理的な発想に転換していく必要性がある。いち早くコスト管理を徹底させるためには、必ず病院の業務の情報化、電子化が急務となってくるものと思われる。ここで、病院における情報化について整理してみたい。
いままでの医療機関における業務のプロセスをそのまま踏襲しただけの電子情報化の失敗は目にみえているように思う。情報化にあたっては、すでにある医療の慣習、形式化した業務を原点から見直し、一度捨て去る必要がある。
医療の情報化は医療機関における患者側、運営側に横たわるすべての業務の見直しから始まって、その結果、必然の帰結としてなされるべきものであって、決して電子情報化のみがひとり歩きするものではないという点を強調したい。いわゆるビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)の一貫として、進めていかなければならないものと考える。(本誌1997年2,3月号、あるいはインターネット http://www2.meshnet.or.jp/~kanno/mm02.htm 参照)
すなわち、一人の患者に関わるすべての業務を分析することにより、診断から、治療、治癒の過程のフローチャートの分析とコスト管理が可能となってくるわけである。フローチャートの分析により、標準化した最も効果的な診療の流れを策定することができる。また、コスト管理面では一つ一つの医療行為ごとに関わるすべての業務の按分率を決定する仕組みを作ることにより、コンピューターは保存された種々のデータから容易に行為別のコストを分析することができると考える。その結果、標準化されたフローから逸脱しようとした症例の修正を速やかに行い、さらに行為別コスト分析から収入としては計上されるものの、不採算な部門があれば思い切った撤退の道もあるし、採算の大きな部門への物的、人的投資の拡大につなげることができる。
こういった試みは、原価管理という面で今後来るべき医療費の定額化に向けて、定額内でどの部門を切りつめていくかといったような経営上で必須のアイテムとなってくるものと確信される。さらに、その評価方法に閉塞感のある職能給議論の理論的裏付けとしての効果も期待されることを附記しておきたい。