劣悪な療養環境では、経済大国・日本のホテルや空港・新幹線を利用する先進国外人も、日本の病院を利用しないのは当然と言える。
生まれた赤ちゃんの99%は病院等の施設分娩であり、亡くなる人の75%は病院で最期を迎える。この精子の尊厳の場を、せめてヨーロッパ並みにしたいというのが我々の念願である。
民間病院も公的社会資本であるとして、2〜3年前から公私病院への医療施設近代化施設整備補助金として100〜200億円の公費の助成はあるものの、同じ保険医療としての公費の中で多額の利益を上げ、繁栄する周辺産業(特に医薬品メーカー)に比べて、ユーザーたる病院の多くが赤字で苦悩し、劣悪なる療養環境の整備もできないでいる現状は、日本の医療の不可思議の最たるものである。
自由経済社会では、商品が流通すれば付加価値が生ずるのは自然のことである。医薬品の発注・購入・保管にかかる費用、中間のロス、投薬包装費、薬品の有効性・安全性の確認、服薬の指導に要する費用などオン・コストとして計上されるものであり、薬価差は必要なマージンといえる。院外処方箋を出せば医療機関での処方箋料の他に、調剤薬局では調剤技術料の他に薬価差益加算されることになる。入院患者には院外処方箋は出せない。外来処方料、入院患者に450点業務があるといっても微々たるものである。すでに薬価差益は病院・診療所の経営の原資の一部となっている。銀行・デパート・商店は全て技術料の他に差益により経営されている。
勿論我々は薬価差に依存することなく技術料を中心に病院経営を行うことは賛成である。薬の過剰な投与を防ぐために保険とは別に薬剤に一部負担をつけるのも一方法である。
最近の国際医薬品情報(5月13日号)によると4月1日薬価改訂後の薬価値引き(薬価差)は22〜23%、中には25%引きで卸と話し合いが決着したものがあるという。20%以下ではメーカー大卸の利益は益々増すであろうことを銘記し、卸・メーカーと交渉すべきであり、大メーカーは今こそ、その高額の利益の一部を卸、ユーザーたる病院に還元すべきである。最近漸く坪井日本医師会長も医薬品問題に手をつけるという。