病院経営者の甘さ

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病院経営者の甘さを痛感

週刊「日経ビジネス」(日経BP社)1997年1月27日号 レターズ(読者から)


1月13日号の敗軍の将、兵を語る「安易な資金調達で倒産、患者さんに申し訳ない」を読んだ。ビジネス誌としては珍しく、病院倒産における院長兼経営者の弁であった。
病院の倒産は医師としての責任と、病院の経営者としての経営責任がある。告白の内容は前者に重きを置いたものだった。これは、通常の企業倒産には見られない特徴だろう。
しかし、厚生行政の保険医療政策にたとえ不合理があっても、経営者がその規制のなかで経営を模索することは、他業種と同様当然のことだ。「患者のため」という錦の御旗で、病院だけがそれを破るのは許せないと思う。
そもそも、大学医学部を卒業してわずか6年、しかも経営者になる前は臨床の研究者だった人物がいきなり中規模の病院を開院したこと自体、無謀なことだと考える。
また、それに融資した金融機関にも大いに責任があるのではないか。
確かに、これまでは医療法上の要件で病院経営者は医師である必要があり、経営と縁遠い臨床医が病院経営を進めてきた。多くに場合、診療への情熱だけでも経営は成り立ってきた。
しかし、今や国の財政議論とリンクした医療費抑制政策が進められており、病院の経営は厳しさを増している。一人の人間が経営と診療を両立させるのは不可能な時代になってくる。今後は規制緩和策として、営利企業の病院経営案も出てくる。そんななか、この記事には典型的な従来型の病院経営者の考えが表れていたように思う。

神野正博(石川県、医療法人理事長・院長、41歳)



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