医療経営Archives

年頭所感

社団法人日本病院会会長 中山耕作(Medical Management 2002年1月号)より

registration date: 2002.1.1


 2002年、明けましておめでとうございます。

 今年は医療界にとって、大変な年を迎えました。それゆえ各病院にとってその存在意義を問われる時となりました。

 各医療機関においては、骨太の、しかも特色を生かした体制で国民の意向を吸い上げ、さらに多様化した要求に対処できるように、院内の改革、情報の開示、職員の教育を真剣に行わなければならない年であると痛感しています。

 さて、昨年暮れの12月には医療制度改革の大綱が決まりました。各新聞の見出しは、今回の改革に対してどちらかといえば批判的であります。曰く、「患者に偏る痛み」、「一番弱い国民に負担」、「根本問題を先送りした医療改革」、「三方一両損の名に値しない」、「質の向上見えぬ道筋」、「玉虫色の決着」、「三方一両損の改悪」等であります。さらに、国民も内閣支持率80%に対し、改革の支持50%と批判的な見方をしています。

 医療提供側にとって診療報酬が下げられることは、質のよい医療を提供することが困難になる可能性もあります。医療とはそもそも人の手に委ねられた労働集約型サービスであり、患者サービスの向上はもとより診療情報の提供など細部にいたるまで、国民の生命を守るために日夜努力をしています。今でも人件費立は収益の50%をはるかに凌駕している中で、四苦八苦して医療の質の向上に励みつつ、経営健全化と永続性に苦労している病院が多いのです。さらに診療報酬が下げられればいくら無駄をできるだけ省いて効率的に邁進しても、経営の苦しさが一段と増すことは避けられないと思います。

 病院の利益は、患者に還元されるものです。しかしながら、国民の生命・健康を守るための担い手である病院の経営は圧迫されているのが現状です。

 近年「患者が病院を選択する時代」となり、各病院の顧客満足が最重要課題となっています。例えばハード面では最先端の機材や設備を導入して高度な医療の提供、療養環境の改善・整備、アメニティの向上。また、ソフト面では、技術向上・サービス向上のために職員教育をすることが求められています。そのための費用もすべて診療報酬で賄わざるを得ないのです。

 病院収入の減収の中での良質な医療の提供は、努力したものが向かわれる制度改革にははるか遠いものとなり、被用者保険の増、受診の3割自己負担(必要な時に)、等々が目白押しです。むしろ増税の方が良いと思っている国民も多いことを知ってもらいたいと思います。

 もう一つ、医療期間川から言わせてもらうならば、かつて消費税が導入された平成元年4月より、医療機関のみがこの13年間、一方的に「痛み」を受けてきたことも国民はあまりご存じないと思われます。現在、社会保険診療報酬に対する消費税は非課税とされているため、最終消費者である患者さんに転嫁できないので、中間段階である医療息観は仕入れに係わる医薬品、医療材料、医療用具、さらには病院用建物の取得や業務委託に係わる消費税等々は病院の増税となっております。実際に、診療報酬で補われているとされる消費税が1.53%であるのに対し、病院が支払っているのは日本病院会会員病院の調査によると2.62%であります。一病院あたり、その差額1.09%、平均6000万円の損税が発生しています。薬品メーカーや医療器具メーカー、建築業、委託業務会社などは無関係で、病院のみがこの損税を払っているわけであります。「一方四両損」という「痛み」を病院のみが13年間負ってきたわけであります。これを解消するためにゼロ税率課税制度を長年関係方面に要求してきましたが、未だに解消しておりません。

 年頭から愚痴っぽくなってしまいましたが、こうした事例があるということを国民の皆様に理解していただき、今年は耐えるべきものは耐え、矛盾を正し、国民と共に平和で豊かな日本を築くことに努力したいと思う次第です。

 国民の皆様のさらなるご理解とご協力をお願いし、新年の挨拶としたいと思います。


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