各診療科の棚には注射器やメス、ガーゼなどの用具がビニール袋に小分けされ収納されている。箱単位で購入していた時に比べると「在庫は劇的に減った」(神野院長)。日本ホスピタルサービスが近郊に設けた配送センターで、在庫を一手に引き受けるからだ。
日本ホスピタルサービスは全国10ヵ所に配送センターをおき、顧客を開拓している。小分け袋に入れたバーコードカードを読み取って定数をコンピューターで管理しているため、減菌期限切れによる廃棄処分もなくなる。
病院はどこの科にどの医療用具がどれだけ残っているかを把握していない場合が多いが、まずこれが改善される。「医療用具への支出が平均して10%程度減る」(後藤俊男代表取締役)という。
伊藤忠商事は子会社のヘルスケアーテック(東京・目黒)を通じて首都圏の5病院を顧客に、在庫管理と物流を展開している。98年1月には九州に進出し、既存の病院の倉庫を使って在庫を管理する「院外管理代行方式」も始める。98年3月期の売上高は前期比3割増の36億円を見込んでいる。
病院向けシステム開発大手の日本エス・ピー・ディ胃(東京・文京)も、卸などとの共同出資で物流サービス会社を各地に設立。病院と長い間付き合ってきたことを強みに、98年3月期の売り上げはグループ全体で前期比8%増の65億円を見込む。
市場拡大を見込んで参入が相次いでいるが、現在のところ、どこも採算割れであるのが実状。医療用具の管理コストが大きいからだ。人手のかかる仕分けの人件費や倉庫の賃貸料、毎日の運送費がかさむ。
総合商社など巨大資本をバックに持つ企業しか参入していないのも、こうした問題を抱えているからだ。
「一部地域では、エスピーディーを脅威に感じた卸が団結し、取り引きをしないように示しあわせている」(関係者)といううわさも出ており、業界内でのあつれきも生じているようだ。
一方、病院側が自前で医療用具管理システムを構築する例もある。東京・板橋に本拠を置く板橋中央総合病院グループは、系列の33病院で使う全医療用具をバーコードで管理するシステムの開発に乗り出した。「自前で開発すれば、コストを押さえられる。98年にも稼動させたい」(布施篤総局長)。
ただ、こうした動きは力のある大病院グループに限られるというのが一般的な見方だ。薬価引き下げ、医療保険改革のうねりが押し寄せる中、病院はコストを引き下げなければ生き残れない時代になった。既存の卸業界を脅かしながらも、病院側のニーズをとらえて「エスピーディーの市場は着実に広がる」(業界関係者)とみられている。