医療経営Archives

医療経営革命

西田在賢/ケイミン・ワング共著(日経BP出版センター、1995年)より

registration date: 1996.3.30


(前略)

 医療経営責任者達はいかがであろうか。日本の病院事業は、1985年前後から経営悪化の報告が目立つようになった。この傾向はバブル経済の最中でさえも続いたうえに、さらにその後に不況にさらされている。その有様は、長らく続いた繁栄の後、質の違うリセッションに直面し、それまでのマネジメントパラダイムを根本から見直すことを強いられた先般の米国の企業と同じで、待ったなしの経営改革が求められているわけである。そのような中で自らのマネジメントを改革して将来を期すならば、彼ら米国企業が取り入れたリエンジニアリングに学べるものが少なからずある。じつのところ、米国では企業経営に限らず、病院事業でもリエンジニアリングの手法は研究され、成果をあげているのである。

                 (中略)

医療はサービス業

 総務庁の「日本標準産業分類」(1984年1月改訂版)にはサービス業の一つとして「医療業」があり、この中に病院や診療所が含まれている。しかし、サービス業における提供者と顧客という関係で医療業を見たときに、これら医療機関は、学術あるいは技術としての「医療」の提供に精通していても、顧客である医療消費者、つまり患者が求めている「医療」に無頓着ではないかということが、ずいぶん前から指摘されてきた。

 日本のこれまでの医療マネジメントの現場では、経営を学んだことのない医師がトップに立って、ただ従来の病院、診療所の運営ぶりを見よう見まねで踏襲してきた。なぜ、経営の素人が医療マネジメントのトップにいるかというと、医療法の定めに従っているからである。病院管理者が医師でなくてはならないというのは、世界の先進国の中でも日本だけだ。欧米の実態はというと、病院長の9割以上は非医師で占められており、たいていが経営の専門家であり、病院の経営に専念する立場にある。

(以下略)

                

はじめに および 第1章 医療の病 より


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