医療経営Archives

「病院支援」異業種が参入

(日本経済新聞 1997年7月10日夕刊1面)より

registration date: 1997.7.11


伊藤忠在庫管理を代行
住金全国で滅菌作業

(記事)

病院関連ビジネスへの異業種企業の進出が相次いでいる。伊藤忠商事は病院の医療用品・資材の在庫管理代行サービスを来年1月から全国展開する。住友金属工業も医薬品小売りの朝日メディックス(東京・豊島、佐藤良一社長)の医療サービス部門を買収、この分野に本格参入した。患者負担を大幅に引き上げる9月の医療保険改革で病院の経営はさらに厳しくなる見通し。合理化・効率化を狙った病院のアウトソーシング(業務外部委託)拡大に今後拍車がかかると新規参入各社は見ている。


伊藤忠は子会社のヘルスケアーテック(東京・目黒)を通じ、久留米大学病院(福岡県久留米市、1305床)から医療用品の在庫管理代行サービスを受託、98年1月にサービスを開始する。東京女子医科大学病院(東京・新宿、1304床)など関東の5病院で同サービスを先行実施中で、今後全国で受注獲得を目指す。
同サービスは注射器、点滴装置、カテーテルなど大病院で必要なすべての医療用品を伊藤忠系列の倉庫に保管、コンピューター管理して、1−2日ごとに必要な分だけ小分けにして各病院の病棟に運ぶ。病院は在庫費用を減らせる他、減菌期限切れによる廃棄処分などの無駄がなくなる。メーカーや卸への発注も伊藤忠商事が代行、「医療用具の仕入れコストは10%以上削減できる」という。

住友金属では、朝日メディックスの部門買収後、使用したメスをはじめ各種医療用品をガスなどを使い無菌状態にする減菌サービスを全国100ヵ所の病院で実施中。また病院給食や医療事務などで企業買収を検討している。さらに住金グループで臨床検査受託や医療機器開発にも着手。現在の医療関連事業の売上高約170億円を、2005年には1000億円に増やす方針だ。

セコムは、医用画像の遠隔診断サービスを拡大する。同社は医用画像を読み取る専門医を抱えており、契約病院からデジタル回線で送られたエックス線CTなどの画像を専門医が診断するサービスを実施している。現在全国で84の契約病院を97年度末には130に増やす計画だ。

企業の病院支援ビジネス参入について、厚生省では「参入は基本的に歓迎。競争によって価格、コストの適正化を期待する」(健康政策局)としている。年間27兆円に上る医療費抑制をねらい、政府は今後も診療報酬の見直しなどの制度改革を進める方針で、病院のアウトソーシングはさらに進みそうだ。


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