特定医療法人董仙会・恵寿総合病院グループは、一般病院をはじめ、老人保健施設(2施設)、診療所(2施設)、在宅介護支援センター(2施設)、身体障害者更生・援護・授産施設、デイケアセンター(2施設)等を運営している。介護保険施行を控え、保険・医療・福祉分野の統合化が進むなかで、神野正博理事長・院長は、「各分野の情報を把握している医療機関の役割は大きい」と指摘する。さらなる事業拡大へすでに計画は進行中。神野氏のあげる4つのキーワードに集約された、同法人の将来戦略を提示してもらった。 |
平成6年以来、当院は“質とやる気を落とさないリエンジニアリング(ゼロからの業務改善)”を旗印に、物流・検査・人事などすべての業務をコンピューター化する統合オーダリングシステムや、イントラネット、本院−サテライト診療所間オンライン化等を進めてきた。取引業者を巻き込んだ情報化の推進(サプライ・チェーン・マネジメント)により、さらに効率性が増すものと思われる。
しかし、これらはあくまでも病院業務の情報化であった。今後はより患者サイドに立った情報化の推進が必要となろう。すなわち、他の法人の診療所や病院とのオンライン化、在宅とのオンライン化である。急速に進むであろう通信環境の進歩と低価格化は必ずや実現可能なものにしてくれるに違いない。
まず、病院における各職種のMission(使命)を明確にすることが重要である。そのうえで、Missionから逸脱する業務は見直しや外注化の対象とすべきである。また、施設も同様に、そのMissonを明確にすることが必要である。それにより、自ずと類型化ができてくるとだろうし、新たな事業展開の道筋が現れてくる。
2000年に向けて、当法人およびグループは、診療所の療養型転換、療養型病院の新設、本院の検診センター新設、訪問看護ステーション新設、特別養護老人ホーム新設、ケアハウス新設、ショートステイ施設新設、デイサービスセンター新設、在宅介護支援センター増設等を計画している。
産業の構造が量の時代から質の時代になったことは、そのまま医療にもあてはまる。特に医療はヒトによるヒトへのサービスである以上、そのサービスの質の向上には施設といったハードよりはソフトを担保とするところも大きい。ヒトには動機づけが必要になる。職能要件に基づく人事考課とともに、やる気を削がないシステム作りが重要になる。
DRGによる疾病管理の下では、比較検討やクリティカルパスによる治療の標準化も必要である。しかし、疾病管理やクリティカルパスによって医療者がどれだけ業務を削減できるかという視点も重要だ。当院では、標準化によって「手を抜けるところは手を抜く」、標準化できないところは「腕の見せどころ」との視点に立ち、クリティカルパスに則って瞬時にオーダー可能な電子化クリティカルパスシステムを立ち上げることとした。
ここでいうアウトソーシングは病院業務の外注化ばかりではなく、病院への外注化も含むものである。従来の清掃、給食、滅菌、検査などの業務の外注化は、先に述べた病院のMissionの整理から考えるべきものである。これに対して、病院自らがアウトソーサーとなり、各種業務や事業を「受託」することが可能であると思われる。医療機関は地域の保健・医療・福祉情報をすでに把握している。今後の介護保険に向けて、医療機関こそ、その担い手となるのではないだろうか。
その点で当法人ではすでに、公的な機関が設置したデイサービスセンター、在宅看護支援センター、ショートステイ施設、配食サービスの運営委託や人員派遣を受託している。今後はさらに、ヘルパーステーション等を新規事業として検討したい。 また、すでに定款変更や行政への申請書類提出を終えるなど、「特別医療法人化」への準備も整いつつある。これを実現させることにより、材料・薬品の販売をはじめコンサルテーションや医事業務委託など、さまざまな医療関連サービス事業への展開を図り、医療機関のリインダストリアライゼーションを進めていきたいと考えている。