特別医療法人制度

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自由競争の荒波に身を投じる第一歩

月刊「Phase 3」(日本医療企画) 1998年6月号
特集:特別医療法人プレビュー


第三次医療法改正で特別医療法人が誕生した。公益性の高い法人類型として、持分を放棄し特定医療法人並みの厳しい要件が課せられる反面、差額病床規制がなく、収益事業が認められるなど、民間病院経営者にとって注目すべき点も見られる。焦点となっていた移行税制の問題も、租税特別措置法の適用により解決されている。
本特集では、制度創設以来、半世紀ぶりに誕生した新しい法人類型の全貌と可能性について探ってみたい。

PART 2:[経営者の見方] 否定と肯定分かれる見解より


Phase3 1998年6月号

待望されている「医療ビッグバン」

本年の4月にはFree,Fair,Globalを柱とする金融ビッグバンが幕を開けた。今後世界標準のなかで金融界の自由化が一気に進むことになった。医療においても「医療ビッグバン」が待望されている。医療者の意識改革と共に、規制にがんじがらめになった医療界における規制緩和が待望されている。一方、介護保険制度をにらんで、民間企業から介護福祉分野への積極的参入も報じられている。

このような背景のもと、今回の医療法改正に伴う特別医療法人制度は、医療界が、介護保険制度に向けて民間企業と競争しうる第一歩となるものであり、同時に自由競争の荒波に敢えて見を投じる第一歩となるものと理解される。

施設要件や内容については他稿に譲り、また、既に持ち分を放棄している特定医療法人という立場でいくつかの因子について具体的に可能性のある戦略を検証してみたい。

頭(ソフト)で収益を考える時代に

まず、駐車場業に関しては遊休資産の有無が大きな因子を占める。また、関連施設として健康施設やクアハウス的なものを有している機関では浴場業というものが直営でできることになる。そういった意味では、この二点に関しては、もの(ハード)を持っているか否かによる選択で、敢えて戦略というものは存在しないと考えられる。

これに対して、ソフトの面での各医療機関の戦略の優劣が問われてくる分野が存在する。第一に医薬品販売、医療用具販売、医業経営相談事業、情報サービス業が可能となった。病院内における衛生材料や市販薬の販売から始まって、他の医療機関を対象にした薬剤・材料販売やそれらの運用システムのコンサルティングサービスまで可能なことになる。すなわち、物流管理とその運用システムというノウハウを持った医療機関がそのシステムを他の医療機関に収益業務として販売可能となる。さらに、各受注医療機関における運用情報をオンライン化し、情報サービスとして管理することが可能になってくる。いわば、医療機関が主導権をとったフランチャイズチェーン、ボランタリーチェーン化の幕開けであると思われる。

また、飲食業、配食サービス、患者搬送サービスの解禁は、介護保険制度導入へ向け、民間企業と最も競合する分野である。従来、医療の供給者として蓄積してきた患者情報と医療福祉情報を、ここで最大限に活用することが可能となると思われる。

このように今回の制度(特別医療法人の創設)は、規制緩和を受けて「頭(ソフト)で収益を考える」時代の到来と理解できる。いかにこのチャンスを活かすことができるかが、診療報酬面で頭打ちとなり、病院淘汰の時代に入った医業経営の分岐点となると思えてならない。


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