このような背景のもと、今回の医療法改正に伴う特別医療法人制度は、医療界が、介護保険制度に向けて民間企業と競争しうる第一歩となるものであり、同時に自由競争の荒波に敢えて見を投じる第一歩となるものと理解される。
施設要件や内容については他稿に譲り、また、既に持ち分を放棄している特定医療法人という立場でいくつかの因子について具体的に可能性のある戦略を検証してみたい。
これに対して、ソフトの面での各医療機関の戦略の優劣が問われてくる分野が存在する。第一に医薬品販売、医療用具販売、医業経営相談事業、情報サービス業が可能となった。病院内における衛生材料や市販薬の販売から始まって、他の医療機関を対象にした薬剤・材料販売やそれらの運用システムのコンサルティングサービスまで可能なことになる。すなわち、物流管理とその運用システムというノウハウを持った医療機関がそのシステムを他の医療機関に収益業務として販売可能となる。さらに、各受注医療機関における運用情報をオンライン化し、情報サービスとして管理することが可能になってくる。いわば、医療機関が主導権をとったフランチャイズチェーン、ボランタリーチェーン化の幕開けであると思われる。
また、飲食業、配食サービス、患者搬送サービスの解禁は、介護保険制度導入へ向け、民間企業と最も競合する分野である。従来、医療の供給者として蓄積してきた患者情報と医療福祉情報を、ここで最大限に活用することが可能となると思われる。
このように今回の制度(特別医療法人の創設)は、規制緩和を受けて「頭(ソフト)で収益を考える」時代の到来と理解できる。いかにこのチャンスを活かすことができるかが、診療報酬面で頭打ちとなり、病院淘汰の時代に入った医業経営の分岐点となると思えてならない。