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逆さ日本地図

隔週刊「石川医報」(石川県医師会) 2004年1月1日号
申年の炉辺寸談


 富山県庁へ行くと「逆さ日本地図」というものが売られている。確かニ百数十円だったと思う。正式名称は「環日本海諸国図」という。

 単に地図を逆さまにしたものである。しかし、地名は逆さまの状態で記載されている。よく発想の転換というが、この地図を見て驚いた。石川県と朝鮮半島や大陸との交流の歴史は聞いたことはある。この地図を見ればその必然はあったように思う。われわれは、琵琶湖のほとりに住んでいるようなものなのである。それに比べて東京や大阪はなんと辺鄙なところか。さらに、富山市を中心に円が書かれている。1000km圏を見ると稚内や屋久島に比べて、ソウルやウラジオストックは近い場所にある。また、1500km圏では沖縄に比べて大連、瀋陽はずっと近くにあるのだ。北朝鮮のテポドンの恐怖を感じるとともに、これからの時代を考えるとこの地図は馬鹿な白昼夢を呼び起こしてくれる。

 日本の医療費の31兆円のうち、1兆円は単純に海外へ材料費・薬剤費として流れてしまうという。「医療に金をかけても、国内の産業は潤わず、輸入しているだけで効率が悪い」というのが国による医療費抑制の考えの基本にあるのかもしれない。医療が「国に貢献する」輸出産業になるためにはどうすればいいのか?他業種を範にとると、当地和倉温泉では日本情緒を売りにして台湾から多くの観光客を誘致している。ならばわれわれも台湾をはじめ、所得の上昇が著しい中国、韓国、ロシアから患者を連れてくることが答えかもしれない。

 そういった意味で、われわれは地域の住民はもとよりアジアで、世界で後ろ指を指されることのない安全で証拠に基づく医療を今まで以上に推し進めなければならないのであろう。逆にわれわれの患者が、日本の医療に嫌気をさし、どんどんお手軽な海外へ医療を受けに行くことだけは避けたいものである。


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