ヒトがヒトに対して、サービスを提供するヒューマン・サービス組織では、その送り手と受け手との間において、対等な関係が成り立つことは少なく、不等項で結ばれているような関係を本質としている。この関係は、サービスの資源の多寡によって、制度として固定されている。この与える、受けるという役割が途中で交代することはあり得ない。この関係において、与える立場であるために、たえずサービス資源を独占しようとし、受け手を彼らに頼らざるをえない弱い立場におこうとする。このような関係の総体がヒューマン・サービス組織である。
ヒューマン・サービス組織では、クライアントの満足という主観的な評価が生産性や効率を指標として重視されるようになる。理念としては、クライアントの要請にしたがって、病院でいえば、医師も看護婦も、患者のために働かなければならない。しかし、彼らの欲求を充足させたいとしても、その達成基準を、客観的な指標によって明示できないことも多く、そのために、合理的な経営管理をいっそう難しくする。そのために、何をどこまですればよいかが不明で、企業のような合理的経営システムを組み立てることは難しい。経営管理に非合理的な要素の混入が避けられないことになる。曖昧さや不確実さ対応のシステムを備えなければならない。
管理機制の構築のためには、指示や命令を中心とする縦割り型、上位下達のコミュニケーションである官僚制システムとは質的に異なるネットワークの構築が望まれる。あるいは、命令よりも説得的な内容を含んだ伝達経路をどのように構築するかである。
それには、上意下達のコミュニケーションを円滑に稼動させる官僚制モデルの整備に加えて、高度な知識と技術をもったプロフェッション間の連携管理と、ボランティズムを経営管理の主要軸として提案する。これらを取り込むことで、ヒューマン・サービス組織は、その字義どおりヒューマンな組織になるだろう。