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医療も消費者契約法の対象に

焦点
週刊「医療タイムス」(医療タイムス社)1999年5月3-10日号(No.1423)より

registration date: 1999.5.17


医療タイムス990510  政府は来年の通常国会へ提出を予定している「消費者契約法(仮称)」に医療を含めることを決めた。消費者契約法は、不当な契約から消費者の権利を擁護することを目的とする。法律の対象範囲は「専門的職業」とされ、営利や公益を問わず、継続性のある事業はすべて含められる。医療については自由診療はもとより、保険診療についても一部で自己負担がある以上は契約行為とみて法の対象としていくことになった。入院や手術は患者の同意が必要な契約行為とみなされる。契約の際には事業者(医療機関)から消費者に対する情報提供義務が課される。必要な情報や虚偽の情報を提供した場合、消費者が契約を取り消し原状回復を求めて損害賠償が請求できるというものだ。

  医療機関で患者が診察を受け手術が必要な場合に、その時点で消費者契約法の情報提供義務が生じ、手術のリスクなどの説明が必要になる。その情報提供が不十分で医療過誤が生じた場合には情報提供義務違反として、民事上の損害賠償請求の対象となる。手術の同意書についても、医師がリスクを負わず、患者にすべての責任を負わせるようなものは、患者に不利益なものとして、同法の不当行為の対象になる。

  法案づくりに向けて経済企画庁は近く消費者契約法検討委員会を設置し、秋までに具体的な運用をつめる。すでに日医はじめ医療団体や病院団体への説明を行い、与党自民党の了解も得ていることから法案の成立の可能性は高い。

  不十分な情報提供で患者が不利益を受けた場合に、民法上の責任が問われることになるため、医療機関にはインフォームド・コンセントの徹底が求められ、リスク回避に向けたさまざまな備えが求められることになった。


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