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収益業務の給食、福祉・医療用具販売は
顧客情報を活用したマーケティングの柱に

日本医療法人協会ニュース No.203・2001年5月15日号
われら特別医療法人


 戦略的に選択したデパート型

 当法人は、454床の恵寿総合病院を基幹として能登地域に2病院、2診療所、2介護老人保健施設、2デイサービス施設、1ショートステイ単独施設を運営している。さらに、関連社会福祉法人で、介護老人福祉施設、身体障害者更生・援護・授産施設、ケアハウスを運営している。この両法人で入院・入所ベッド1,127床を擁し、「けいじゅヘルスケアシステム」と呼称している。いわゆる「自己完結型医療福祉複合体」となっている。

 このようなデパート型形態に対して、専門特化型や地域連係型などいろいろな形態の法人が存在しうるが、当法人は戦略的にデパート型を取りつづけていくことだろう。

 生物の世界において、種の保存を支えるのは、遺伝子の多様性であるといわれる。遺伝子を多様化し、遺伝子の異なるグループをたくさん形成しておくと、どんな環境変化が起こっても、必ず一部の集団は生き残れるという。われわれ医療法人も自分の遺伝子を知る必要がある。今日の成功を支えてきた成功要因と限界である。成功を支えてきた技術やマーケティングやマネジメントの強みと、その裏腹にある限界である。環境が変われば、強みの遺伝子は弱みに変わる。だからこそ多様な遺伝子を組み込んでおく必要があると思うのである。

 このようななか、われわれは多様な遺伝子のひとつとして、特別医療法人への道を選んだのである。

認可までの道のりは混乱を極める

 当法人は、すでに昭和44年3月に、特定医療法人の認可を受けていた。平成10年4月の第3次医療法の改正で特別医療法人制度が施行された際も、認可を受けるのに条件面で何ら問題はないと判断された。唯一、法人税率(特に収益業に関して)の問題が存在した。これに対しての回答は、当時さまざまであり混乱を極めたことは事実である。しかし、解釈が異なっても大きな問題ではないと判断し、平成10年6月の法人理事会で、特別医療法人化に対しての了承を得て、直ちに行政との交渉に入った。その後の行政側の混乱と対応の遅さは多くの事例と同様である。また、認可後に国税当局より、すべての業務に対して「特定」の税率を適応する旨の回答を得ている。

 時同じくして、関連社会福祉法人における特別養護老人ホームならびにケアハウス建設の構想が持ち上がった。建設地を含め、様々な議論がなされたが、そのなかで特別医療法人の収益業務として、社会福祉法人からの給食受託案が浮上した。ここからいっきに建設地を医療法人立老人保健施設の隣接地とすること、廊下で両施設を連結すること、社会福祉法人側には給食施設を設けないことで、土地の有効活用を図ることとした。

 特別医療法人の認可は、平成11年9月となり、結果的には特養ホーム竣工と同時ということになった。これにより、認可とともに、収益事業としての給食業務が始まったわけである。

収益業務情報を患者情報等にリンク

 前述の給食業務のほかに、平成12年6月より、恵寿総合病院の増改築とともに、院内に法人直営の医療福祉ショップ「めぐみ」をオープンさせ、法人組織に販売課を新設した。ここでは介護保険における福祉用具貸与事業所の役割も担っている。実際、福祉用具のほかコンタクトレンズや万歩計などの医療用具、寝具、紙おむつ、健康関連の書籍、癒し系のCDなど、店内に約500点のアイテムを展示販売している。その他にカタログ販売も実施しており、約5,000点のアイテムの取り扱いを行っている。

 これら販売データは、医療側のオーダリングシステムの患者情報、介護側の管理システムなどとリンクし、当法人全施設をオンラインで結ぶ約340台のコンピュータネットワーク内で共有できるものとした。さらに、「めぐみ」と同時にオープンさせた介護業務のコールセンター(けいじゅサービスセンター)で電話による販売も行っている。また、今月からはインターネットによる販売事業も開始した。

 現行においては、収益事業の全収入に占める割合は1%にも満たない。しかし、本制度は法人業務の多様化以上に、顧客情報を有効に使ってマーケティング活動を行うCRM (customer relationship management)活動の柱となってくるものと確信してやまない。


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