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米病院チェーン日本進出

日本経済新聞1999年8月15日、朝刊1面より

registration date: 1999.8.16


まず経営支援事業医療機関を系列化

  世界6カ国で564ヵ所の医療機関を運営する米トータルリーナルケア(TRC、カルフォルニア州。ビクター・シャルティエル会長)は医療分野の規制緩和をにらみ、日本国内で医療機関のチェーン展開に乗り出す。全額出資子会社を日本に設立、既存の医療機関の経営を支援する形で事実上、系列化する。海外の医療機関運営大手が日本に進出するのは初めて。米国流のマネジメントを売り物とする同社の進出で、規制に守られ、コスト管理などで遅れをとっていた日本の医療機関は一層の経営改革を迫られる。

規制緩和にらみ先手

  TRCはトータルリーナルケアジャパン(TRCJ、東京・中央、グレゴリー・ローズ代表取締役)をこのほど設立した。まず人工透析治療を手がける医療機関を対象に系列化を進める。

  後継者がいない、経営が安定せず廃業したいといった医療機関の土地建物、設備を買い取る。TRCJの独自の病院経営の手法、ノウハウも提供。土地などの賃貸収入や経営指導料を取る。将来は医療機器、医薬品をTRCJが一括購入、コストを大幅に引き下げる。

  複数の国内医療機関と透析部門の譲渡について交渉中で、年内にまず2ヵ所の医療機関を系列化する予定。大手医療法人との提携でも具体的な交渉に入った。同分野で数年後には国内トップを目指す。

  日本では医療法により、民間企業による医療機関経営は認められていない。このため経営主体は既存の医療法人や医師のままとし、TRCJは経営指導などで間接的に関わる形を取る。政府の行政改革推進本部の規制緩和委員会が医療機関経営への企業参入を提言するなど、企業による病院経営解禁を促す動きが出ており、TRCJは解禁を待って系列の医療機関のチェーン化に踏み切ると見られる。

  TRCは米ニューヨーク証券取引所に95年に上場、98年の売上高は約4億7,000万ドル。米、英、独などで透析治療専門の医療機関を経営、4万4,000人以上の患者を治療している。TRCに続き他の大手医療機関運営会社も相次ぎ、日本市場に参入する見通し。

異業種・外資企業の医療・介護関連分野への最近の参入例
<98年>
7月・松下電工が在宅介護子会社設立
9月・セコムが船橋市の病院の土地・建物を取得
12月・トーメン傘下企業が調剤薬局事業に参入
・セコムが船橋市に「セコメディック病院」開業

<99年>
2月・ジャスコが調剤薬局大手クラフトに資本参加
・丸紅が調剤薬局大手アインファーマシーに資本参加
4月・TOTOが調剤薬局を開設
6月・三井物産がSRL系調剤薬局企業に資本参加
8月・TRCが日本の医療機関の系列化を表明

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