その目標は1)政策決定過程を現場のニーズをきちんと取り込んだものに変える。2)その場合、診療行為そのものが資料であるので、その集積・分析を行う――などとしている。
具体的には、医療制度と医療保険制度の二つの柱を立て、改革の四つのキーワード(意識改革、制度構造、コスト構造、情報構造)ごとにコストベネフィットを検討する方針を採った。改革の基本は、財政的な側面に引きずられた政策は認めないとするもの。したがって、薬剤費の参照価格制度には「外国で失敗した例であり、これをねじ伏せたい」と反論。また、昨年9月の薬剤一部負担の年度額が4,600億円に達することには、「患者への負担がいたずらに増えただけだ。国家権力の暴挙というしかない」と問題視した。DRG/PPSについても、「小手先の財政論議にすぎない」との見方を示した。
財政論議を問題とするならば、社会保障を経済活動への積極的なプラス要因と考える見方も必要と提唱した。裏付けには総務庁の試算を引用。このデータでは、1兆円の税金を社会保障部門に投入した場合、労働者の所得は約3兆円増え、公共事業部門に投入した場合の1兆9,000億円を大きく上回る。さらに消費波及効果を加えた合計では、後者の2兆8,000億円に対して5兆4,000億円の効果が出るとしている。
同改革構想を総括して、「完全な試算はまだだが、これによれば、国民から保険料負担に頼らなくても、コストベネフィットに十分効果が期待できる」「少子・高齢化社会への対応や国民へのやさしい医療という点で、国策と同方向性がある。最良の医療提供を行う自信が持てる」などと説明した。