医療経営Archives

欠点は個性につながる:“特殊”ではなく“特徴”と捉えるべき

米本倉基著(GREEN MANAGEMENT 7月号;front page、日本医療企画・ミドリ十字 1996年)より

registration date: 1996.7.9


(前略)

「マネージメント手法」では、コンサルタントや顧客の業種、業態によってその違いはないと考えられている。たとえていうならば、登る山が違っても、登山の装備や心構えの基本には違いはなく、われわれガイド役も、その点の手法に特別な準備は必要ない。注意すべきは、登る山によって異なるその「特徴」のみと言え、それはあくまで「特徴」であり、多くの山に登っていると山自体に、「特殊」なのぼり方を必要とする山は少ないことが分かってくる。

そんな仕事柄、多くの現場の方と接し、業務改革や改善をいっしょに検討する。毎回例外なく改革や改善の壁にぶつかると「当社(当院)は特殊だから...」と、投げやりに近い言葉を耳にする。毎日違った職場を渡り歩くわれわれにとって、現場の方が「特殊だとあきらめていること」はむしろ、どこの職場にも例外なく存在することで、また反対に、「どこでもやっている常識」とする日常行動が、他ではとっくに改善されている、実に合理性にかけることだったりもする。このような「特殊」と呼ばれている事柄は、それぞれの職場や業種にとっては「困った問題」と同じ場合が多く、このような解決不可能な問題を説明しようとする場合、当人らは何が課題かをうまく整理できず、「特殊だから(しかたがない)」と片づけ、不思議なことに、聞き手も妙に納得してしまうようである。

この言葉は、どうも経営において組織全体に固定観念をはびこらせ、活力をも吸い取ってしまう“言い訳”という危険な麻薬的言葉であるらしいが、これら「特殊なこと」を細かく分解・整理すると、ほとんど原理や原則部分では共通としてまとめられ、解決法も同じ場合がほとんどであることが真理らしい。分解した特殊な部分のうち、原理や原則に当てはまらないものもあるが、これらはおよそ「特殊」なんて大袈裟なものじゃなく、強いていえば「特徴」というべき程度のものである。「病院経営は特殊だから、外部の人間にはわからないよ」とよく言われていた。最近はどうも少しづつ変わっているようだが、まだまだ、医業経営の「特徴」を「特殊」と言って、排他的に捉えている風土は根強いようである。

若輩者の小生は、ある方から「他人の欠点を“特徴”となるべく考えるように」とのご指導をいただき、それ以来心がけているが、まさしく欠点は裏を返せば個性につながる。個性は伸ばせば「強み」となる。医業経営も「特殊」と捉えずに、「特徴のある業種」として認識し、他業種と「真のマネジメント」という共通のモノサシで捉えていきたいと思う。また、そのような視点が、今病院経営に求められているのではないだろうか。

(米本倉基氏:三和総合研究所経営戦略本部、医業・福祉・高齢化研究チーム研究員)


医療経営Archives目次に戻る