第一講・解答・解説




【第一講・解答例】

 我々が外国語を学習する場合、まず意識するのは、発音、文法などの「形式」の違い
である。例えば、発音、文法などの形式の違いは、筆者の言う「あらわな文化」の違い
と考えられる。我々は初歩の段階では辞書的に外国語を日本語に置き換えて理解しよう
とするが、その場合、言葉の意味は変わらず、変化するのは言語の形式だけだと考えて
いる。
 ところが、我々が生活に密着した外国語の文章を読んだり、外国人と会話をする場合、
ある語が文脈の中で持つ意味、ニュアンスが日本語のそれと一致しないと気づくことが
しばしばある。これは、語の背景に思考・心情・習慣の細かな差異から作り上げられて
いる文化の体系があるためである。筆者はこれを「かくれた文化」と呼んでいる。
 従って、我々が外国語を学ぶ場合には、語の意味の違いが「文化の体系」の違いであ
ることを意識しなければならない。なぜなら、我々が「相手に通じる」と信じ込んでい
る言葉の内容や考え方についても、異なる文化の中で暮らしてきた人々は違った捉え方
をしているはずだからだ。この意味では、外国語学習に必要な第一の姿勢は、異文化の
背景を意識することであると言える。
 もう一つ大切なのは「自分自身」を相対化することである。言い換えれば、異文化、
あるいは「他者」が自分とどのように違うかということを理解するためには、意識して
いなかった自分自身の言葉や文化について自覚しなければならないということである。
この点から言えば、外国語学習に必要な第二の姿勢は、その背景にある文化と比較しな
がら日本文化を客観的に見る姿勢だと言える。「ことばというものが、世界を違った角
度、方法で切りとる」とは、外国人のものの見方を通して日本人のものの見方に気づく
ということである。これこそが外国語の学習の難しさであり、同時に面白さであると私
は考える。


【解 説】

  今回のテーマは「まず小論文を書いてみる」ということである。このテーマに沿っ
  て小論文の書き方を説明してゆこう。
  
一  主題をつかむ

  小論文を書く場合、まず最初にしなければならないことは「何が要求されているのか」
を知ることである。課題は短い語や文で示されることもあれば、長い文章を読んで考え
るように指示されることもある。どちらの場合もそこで要求されていることを最初に正
しくつかまなければ的外れな小論文を書くことになってしまう。例えばこの問題の場合
注意しなければならないポイントは三つある。

  1  文章A・Bを参考にする。
  2  我々がどのような姿勢で外国語を学ぶことが望ましいかを考える。
  3  文章Aの「あらわな文化」「かくれた文化」の違いに配慮する。

  これらが守らなくてはいけないポイントである。とりわけ重要なのは、2の、我々が
  どのような姿勢で外国語を学ぶことが望ましいかという問題である。主題について考
える場合、何もかも自分で考え出す必要はない。課題文のある小論文では、文章のなか
に必ずヒントが含まれているのだ。設問で要求されていることが分かったら、課題文の
中の主題に関係する部分に印をつけておこう。文章Aでは後半に「外国語を学習するこ
との意義」に関する説明があった。また文章Bには「外国語学習の具体例」を挙げて注
意しなければならない点が説明されていたはずだ。つまり主題は課題文の正しい読み取
りによってつかめると言える。

二  素材を探す

  主題がつかめたら次に必要なのは、文章を作る材料を探すことである。短いことばで
テーマが書かれているだけの小論文では、この材料を自分で見つけなければならない。
しかし、今回の問題は課題文があり、しかも前項で挙げた3のポイント(文章Aの「あ
らわな文化」と「かくれた文化」の違いに配慮する)があるので、材料は比較的簡単に
見つけることができよう。
  「あらわな文化」と「かくれた文化」の二つのうち筆者が重点を置いているのは、後
者の方である。だから、この二つの違いに配慮するということは、
(1)ふたつの文化の違いをまとめる
(2)「かくれた文化」がなぜ重要かを考える
という二点を中心にして考えるということである。
  まず「あらわな文化」と「かくれた文化」の違いが外国語学習の上でどのように現れ
るかということを考えなければならない。「あらわな文化」は文章Aで述べられていた
「普通の人が気付く、いわゆる文化の相違」に当たるから、外国語の場合には誰でも気
づく、ことばの目立つ違いということになろう。英語を例に挙げれば、日本語と違う点
は「アルファベットを使って書かれる」「発音の体系が違う」「文法が違う」等の要素
である。我々が外国語を日本語と明らかに異なったものとして意識するのは普通これら
の点によるのである。
 これに対して文章A「元来自覚されにくいもの」と書かれていた文化の相違は、具体
的には文書Bの「雨」や「どしゃ降り」に対する英語圏の人々と日本人との「感受性の
相違」に当たるものであろう。こうした感受性の相違は外国語の単語から始まって文へ、
そして文章へと広がる大きな文化的差異に結びつくものだと筆者は考えているのである。
 以上の違いが明確に理解できれば第二の点、すなわち「かくれた文化」が重要である
ことの理由も明らかになるであろう。簡単に言えば、外国語は翻訳すれば意味が分かる
というものではないのである。翻訳とは外国語の文章を日本語の文章に置き換えること
と我々は考えがちである。しかし、筆者の考え方によれば日本語の文章の背後に既に自
覚されない形で、日本人には分かるが英語圏の人々には理解できない「かくれた文化」
の基盤が存在しているのである。従って、翻訳して出てきた日本語は元の外国語、例え
ば英語の持っている多くの「かくれた要素」を切り捨てた結果生み出されてきたものに
他ならない。これでは外国語を通じて異文化を理解できたとは言いがたいであろう。
  以上二点の読み取り、考察が小論文を構成する素材となるわけである。

三  論理的にまとめる

 小論文が私的エッセイと違うのは「ある主張を論理的に展開した文」だということで
ある。今回は小論文練習の第一歩として「理由(原因)と結論(結果)の関係を正しく
書く」という点に重点を置いて説明しよう。
 前項で述べたようにこの小論文で求められているのは「あらわな文化」「かくれた文
化」のうち「かくれた文化」が外国語学習の上でも重要で、しかもそれが外国語を学ぶ
望ましい姿勢につながっていることの理由を説明せよということなのである。もうおわ
かりのように、その理由はそれがその文化に属する人々の生活や考え方をすみずみまで
支配しているからである。とりあえずこうした理由と結論の関係が書かれていれば、こ
の小論文の論理的構成は合格である。
 だが、この理由と結論の関係をいきなり最初に書くわけにはいかない。課題文には外国
語学習以外の例も文章Aで説明されていたから、そうした例を外国語学習の場合の例に
自分で置き換えておかなければならない。それが前項の素材探しで扱われた問題である。
すると全体の構成は例えば次のようになる。(これが構成メモだ。)

  ○外国語学習における「かくれた文化」「あらわな文化」の違いの具体例
                                     ↓
  ○「かくれた文化」が外国語学習の上で重要な理由の説明
                                     ↓
  ○外国語を学ぶ姿勢としては異文化の表面的な目につく部分だけではなく、全体像を
   知ることが大切だという結論

 このように素材が論理的につながるように構成を考えよう。最後に「解答例」で示し
たように「ことばというものが世界をいかに違った角度、方法で切りとるものかという
問題」は異文化に対して向けられているだけではなく、日本文化に対しても向けられて
いることに気づいてほしい。
 このメモの各項目に「肉づけ」をすれば答案になる。「肉づけ」とは、具体例を入れ
たり、課題文の内容を自分はどのように読んだかを説明することだ。私の「構成メモ」
と「解答例」を見比べれば、肉づけの仕方がわかるだろう。
 以上三段階に分けて小論文のやさしいまとめ方を述べた。小論文の学習はこのように
素材をまとめ、明確な理由(原因)と結論(結果)の関係に従って配列するという練習
から始めるのがよい。普段から、学校の教科書にある文章、あるいは入学試験の問題に
なっている文章等を段落毎に要約し、段落と段落の関係をつかむ練習をするとよいだろ
う。その際今回の問題のように、対立した項目の関係から筆者の主張をつかむことを忘
れないでほしい。


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