「森林資源の総合学習活動への活用」

 東京都の産業振興ビジョン策定に際して募集があり、日頃の研修の成果として提言した。

1. プロジェクトのタイトル:「森林資源の総合学習活動への活用」

2. プロジェクトの目的:

 荒廃しつつあるという、西多摩、奥多摩の森林を林業としてだけではなく、自然環境、樹、林間農業(アグロフォレストリー)、木材(間伐含む)、 木工、建築、各種体験学習など多面的に捉え、「使って育てる」ことで積極的な資源保全を図る。
 この利用の課程において、既存企業が多面的に係わり、或いは新たなる関連企業の起業を促すことで、”ソフトな産業”の構築を可能にし、 新しい産業の振興を図る。

3.プロジェクトの概要:

1)方法論
 森林を幅広く産業の場として活用するため、子供達(小中高)の「体験学習の場」とする事をまず行い、これを核として若者や大人を含めた各層での活用に展開していく。 子供達が自然との関わりの中でどうしても学んで欲しい4点は下記である。
  @木登りが出来ること:動物として生きるための基本
  A火を起こし利用出来ること:人間として獲得した才能
  Bナイフが使えること:加工する技術の基本であり、ナイフを使うには注意が必要なこと、切ると痛いことを実感させる。
  C命の大切さを体感すること:森の昆虫や小動物の生きる姿に触れ、生きることの厳しさや尊さ、生存することの意味などを学ばせる。
 もちろんこれらは最低限の基本であり、学年や学習が進むに従って高度な体験をさせることになる。

2)背景とアプローチ
 根底には、程良く人手を掛けてこそ森林が守れ、森林も力を発揮出来るとの考え方がある。ただ問題は多面的に森林を活用するには、 ドイツのシュバルツバルトでも政策を見直して実行し森林を再生したように、広葉樹と針葉樹の混合林を早く育てることである。
 つまり、まず多数(多地域)のバランス良い「混合林」の育成から、各層の都民が参加したプロジェクトは着手しなければならない。 その中で、今あるものを利用した体験学習への活用も平行して開始すべきことである。長年産業を視野に入れながら多摩地域の探索を体験してきたことから、 その可能性を十分認識できた。

3)展開方向
 以下を体系化することで、より総合性が担保出来るし、ソフト産業にも結びつく。
 @小中高の学校において「総合的な学習」の中に、森林で環境、産業、文化、生活などを体験的に学ぶことを行う。
  もちろん、学校教育の一環のみならず自分たちが自主的に関 われる仕組みを同時に組み込むことも大切であり、
  出来るだけ日常性の中で継続的に体 験する場としての解放的なアプローチとする。
  このため各市町村が身近な所に、例えば 学校帰りに寄れるような小さな森を創り、自分達で遊べるような環境を与えることも
  重要なことになる。小さな森の片隅に手作りの工房やショップが有ればなお望ましい。
 A大学生(高校生なども可)などの若者ならではの活用を促進すると共に、@に関連して若者にボランティアで参加してもらえる
  仕組みにすることも必要である。
 B元気な高齢者(定年退職者)に参加してもらう。
 C小中高の生徒の親に係わってもらう仕組みを取り入れる。
 D地域の企業に資金、人の提供のみならず、ビジネス機会の面で積極的な参画を促す。
 E木工など木を使う工房を育成すると共に、これを使う生活や学習のキャンペーンを張る。

4)活用方法
 一次、二次、三次、四次の各産業及び産品生産の場として活用する。
つまり、一次産品(ハード)としての樹、木材のみならず、加工を組み合わせた二次産品化も重要であるが、
更に、サービスや経験型産品などのソフトな分野での活用を重視して、産業としての付加価値を付けていく。
これから始まる「総合的な学習」の機運は1つのチャンスである。

4.効果:

1)森林資源の保全の促進と、都民の生活の質向上のなかで、森林資源を多面的に活用する、複合型産業の振興がはかれる。
2)都会の子ども達に自然の営みを通して、生きることとは何かを体感させられる。
3)より自由な人間性復活の手段として、多くの都民が自然と係われる。

5.問題点:

 @針葉樹のみでは多様性が無く、多様な使い方が出来ないことが明らかになっているにも 係わらず、政策面の展開が不十分である。
  「たまらいふ21」の時にもこの点は指摘したが、混合林に対する対策が不十分であり効果が上がっていない。
 A森林の持ち主の中でも、まだ針葉樹神話から抜け出られない人が多い。
 B総合的なアプローチには、縦割り行政の解消が必要であるが、これも困難である。
  せめてプロジェクトとして連携体制が組めるかどうかにかかって来る。
 C親(特に若い母親)の過敏性:例えばボランティアに対する責任追及・・・保険で対処
 D学校毎に考え方が違う、特に学校長の考え方に引っ張られる可能性が高い。

6.必要な事:

 ・各地域の自主的な取り組みを促進すること
 ・森林(自然環境)を「使って育てる」考え方への意識改革
 ・子供の育て方、過保護の傾向の修正:このままでは創造性が育たない
                   (データ的な調査、証明が出来ると良い)
 ・プロジェクト化し、行政各部署の連携を有効に進めること
 ・個人企業(インストラクタや手作り工房など)に対する訓練や販売面の支援の仕組みの構築
 ・経験者を先生にする。退職者が候補として有望
 ・既存の資源(遊休施設や潜在能力のある埋もれた人材)を有効活用し、コスト低減を  図り、プロジェクトを円滑に進めること

7.協力、提供出来ること:

 ・ボランティアしての現場への参加(グループ)
 ・工房型企業社会への理論的裏付けの構築(個人的)
 

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