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弥生室内管弦楽団第25回演奏会

25th


ベートーヴェン:劇音楽「シュテファン王」序曲

 ハンガリーの首都ブダペストは、中心を流れるドナウ川をはさんで東側のブダ、西側のペストからなり、それらを合わせて都市名としているが、そのペストに1811年新しい劇場がオープンすることになった。そのこけら落としのための委嘱作品として作曲されたのが「アテネの廃墟」、「シュテファン王」という2つの劇音楽である。シュテファン王というのは、ハンガリー建国時代の英雄で、現地語では「イシュトヴァーン王」と呼ばれている。その伝説物語をコッツェプーという台本作家が脚色してこけら落としの舞台に乗せることになった。その音楽担当がベートーヴェンだった訳である。  ところが、「シュテファン王」の方は、あまり評判が良くない。ベートーヴェンの弟子にも「先生らしくない曲だ」と言った人がいるそうである。どうもやっつけ仕事で仕上げた様子が窺われるからのようだが、ハンガリーの民謡やリズムをこれ見よがしに採り入れたのが田舎臭いと思われたこともあるようだ。そのためか、演奏頻度はあまり高いとは言えない。
 今回とり上げるのはその序曲であるが、駄作だと思って聴いてみると途中で第9の第4楽章に出てくる主題が出てきたりして、思わずニヤリとしてしまう。もっとも、初演の頃はまだ第9などは作曲されていなかったので、その主題がそんな大作に発展するなどとは誰も思わなかったであろう。
 この曲に出てくるハンガリー独特の要素は、リズムにおいて特徴的である。一般の西欧系音楽のリズムは「タンタタ、タンタタ」となるのに対して、「タタタン、タタタン」というリズムは東欧系であると言われるが、まずこのリズムを持った素朴な主題が出てくる。それから、主部をなす強烈なシンコペーションによる主題。これもアジア人の血の流れを汲むハンガリー人のリズムだ。モンゴルの大草原を駈ける騎馬民族の血を彷彿とさせる。例の第9の主題が出るのはその後だ。コーダは「先生らしくない」どころかベートーヴェン大得意の盛り上がりを見せる。
 まあ、ベートーヴェン程の大作曲家の作品がそれほど駄作である訳がなく、もし駄作に聴こえるならそれは作曲家のせいではなく、演奏が悪いせいだ。でも、名曲に聴こえたら「やっぱり演奏が良いからだ」などと言うとベートーヴェンに怒られるか・・・。曲も演奏も良くなければ名曲には聴こえないというのが普通である。



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