入門者への教え方
武道の道場では厳しく教えるのが当たり前の様に思っている人が多いかも知れません。他の道場は分かりませんが、当流、当会は当てはまりません。
延春先生には、"教える時には、まず良いところを褒めよ、教わる人が良いところを褒められて稽古からの帰途につく様にせよ。稽古の中で、一つか二つの最も直すべきところだけを注意する様にせよ。但し、注意したところは、その稽古の時間の中で必ず直る様に教えよ"ということを、常に言われていました。延春先生が指導する際には、まさにこの通りに行われていました。
初心者に教える際には、まだまだ基本ができていないので、どうしても多くの注意をしたくなりますので、特にこの通りに行っています。叱責する様なことは一切行いません。延春先生は、"教える側は、教わる側の30倍忍耐せよ"と良く言われていました。
延春先生の門人は、自分は先生に特に目をかけられた、と思っている人が多く見受けられますが、延春先生のこうした教え方にもよると思われます。
兵庫助利厳師の『始終不捨書』の「十問十答の事」にも、「(初心者)に余り細かいことを直し過ぎてその人の良さを殺してしまってはいけない。その人の心が固まって自由を障げている所を発見して直す」(『柳生新陰流道眼』延春先生の解説)と書かれています。当流の教え方の伝統と言えるでしょう。
ただ、ある程度上達していった人は、延春先生から褒められるということが殆ど無くなります。厳しい言葉は使われませんが、上達するに連れて稽古自体は厳しいものになっていきます。
私自身は、褒められた記憶は殆ど残ってなく、厳しくご指導頂いた記憶が殆どです。ただ、その厳しいご指導のそれぞれが、当流の様々な重要なポイントばかりだったとあらためて思い起されます。
最も直すべきところを注意する際の着眼点は、前出の「十禁習之事、十好習之事」と「見掛五箇之大事」、独り稽古のやり方に上げた「身位」、「間積り」、「拍子」となります。先輩にも、「間合い」、「太刀筋」、「拍子」の3つと言われていました。
東京の教場で延春先生が教授する際は、延春先生の前で打太刀、使太刀が一組で勢法を使い、延春先生がその使い方を指導をするという形式でした。打太刀となって教える立場になった者も、先生の前で打太刀を使う中で、使太刀に具体的に何をどの様に注意をすべきかご指導を受け、教え方を学んでいました。
延春先生は指導の際には、言葉で説明しさらには見本を示す、という教え方でした。先輩からもできるかぎり言葉で説明して指導するように、と言われていました。
打太刀を始めて間もない人は、言葉でうまく説明できず、使太刀を文字通り、手取り・足取り直す人が多いものです。
言葉で説明するというのは、形を直すのではなく、使太刀の身勢・はたらきを使太刀が自らの視点・視座で把握して直すことであり、これが斬り合いを主体的に進める当流の転(まろばし)に向かう指導の方法と考えています。
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