財政再建は先進国に共通する重要課題のひとつだ。米国は2002年度の財政均衡を目指しているし、欧州では1999年の通貨統合実現のために緊縮型予算を組んでいる。各国が痛みを伴う歳出カットを進めているなかで、日本の立ち後れが鮮明になっている。
国民経済計算統計を基にした国、地方、社会保険基金合計の債務残高(公債残高と借入金)は95年度末で448兆円。国内総生産(GDP)に占める比率は、先進7カ国の中で悪い方から3番目。経済協力開発機構(OECD)の予測では、98年までは最も速いペースで借金が増えていく。
三和総合研究所は、歳出削減を進めなければ債務残高が2020年に1,400兆円を超えると見る。日本総合研究所はさらに悲観的で、2,200兆円に達すると予測する。公債発行の増加が続けば金利上昇、投資の減退という悪循環に陥る可能性がある。
債務残高が1,400兆円としても、国民一人あたりの借金は1,000万円以上。将来へのツケガ膨らむ一方で、高齢化社会を支える国民の負担もますます重くなる。
額面年収526万円に対して手取額は250万円足らず−−。三和総研の試算によると、2020年度の平均的なサラリーマンは給料の半分以上を国と地方に徴収されてしまう。この先23年間で一人当たりに雇用者所得は6.4%しか増えないが、家計の直接税と社会保障負担を合わせた額は倍近くに膨らむからだ。
国全体で見た国民負担率(国民所得に対する税負担と社会保障負担の合計額の割合)は96年度で36.9%。多くの長期予測は2020年にはこれが50%を超えて、現在のドイツやフランス並みになると見る。経済成長の鈍化と負担増で豊かさを実感できない社会になれば、働く意欲が減退したり、優秀な人材が海外に流出したりする副作用が避けられない。