表1の科目別平均で、他業種との違いで特記すべき点は医業費用のうちで給与費が50%を越えていることかと思います。NHKによりますと、製造業では23%,デパートで10.9%、さらに、ディスカウントストアでは3.9%であることと比べると、いかに病院では人が中心であるかということ、しかも資格を持った人(医師に始まり、看護師、薬剤師、検査技師、レントゲン技師、理学療法士、作業療法士、栄養士、臨床工学士、義肢装具士:いずれも国家資格であり、その他言語療法士、視能訓練士、ソーシャルワーカーなど)が多く必要かということががいえるかと思います。
また、収益−費用で赤字であり、公的病院では多額の補助金が組み入れられることを考え合わすと、さらに赤字幅は広がると思われます。
赤字幅を、縮小させるためには、いかに収益を伸ばすか、費用を削減させるかということに尽きるは、経済原則であります。
様々の規制で資格を持った人を減らすわけにはいきません。したがって、間接部門の人のリストラと給与費以外の経費を削減する努力が必要となってきます。
表2 過去からの診療報酬改定の推移
1994 | 1996 | 1997 | 1998 | 2000 | 2002 | 2004 | |
診療報酬 | 4.80 | 3.40 | 1.74 | 1.50 | 1.90 | -1.30 | 0 |
薬価等 | -2.12 | -2.60 | -1.32 | -2.80 | -1.70 | -1.40 | -4.20 |
ネット | 2.70 | 0.80 | 0.38 | -1.30 | 0.20 | -2.70 | -1.00 |
医療経営状況の悪化がいわれています。表2に過去からの診療報酬改定の推移を挙げました。特に2002年(平成14年)の診療報酬本体部分の初めての引き下げが多くの医療機関の経営を直撃するものと思われます。しかし、公私病院の赤字体質はここ数年変わらないものの、今回の表1データでは影響が軽微なのには驚かざるを得ません。公私共に、経営努力が実を結んだのかもしれません。
自治体立病院の赤字体質は驚くばかりであり、ここに多くの税金が補助金として、投入されていることは、財政構造改革の盲点ではないかとも思います。
2004年改定では、薬価、診療材料費のみの引き下げでネットでは-1.0%ではあるものの、全く診療報酬が変わらなかったわけではありません。引き下がったもの、引き上がったものがあるわけで、おのおのの病院の特長によって、泣き笑いが見られることでしょう。
流通サービス業 | 売上高(兆円) | 摘要 |
医 業 | 23 | 1991年/厚生省 |
外食産業 | 28 | 1992年/外食産業総合調査研究センター |
衣料製品流通業 | 13 | 1991年/矢野経済研究所 |
百貨店業界 | 10 | 1991年/日本百貨店協会 |
チェーンストア業界 | 15 | 1991年/チェーンストア協会 |
情報処理サービス業 | 7 | 1991年/通産省 |
ホテル・旅館業 | 2 | 近年推定値/ZN分析 |
製造業 | 生産高(兆円) | 摘要 |
自動車業界 | 44 | 1991年/通産省 |
家電業界 | 7 | 1991-1992年/通産省 |
住宅業界 | 24 | 1991年/経済企画庁 |
食品業界 | 24 | 1991年/通産省 |
衣料製造業 | 4 | 1991年/繊維工業構造改善事業協会 |
医薬品産業 | 6 | 1991年/厚生省 |
このように医療は、利益率を別にして、国の経済の中で占める割合が、極めて大きいものといえます。かって生活の中で基本とされてきた「衣・食・住」から「医・食・住」へシフトしてきている感さえあります。その中で、「仁術」の名の下に、医療に“ Management=やりくり”が軽んじられてきたことは、怠慢としか言いようがありません。もっと、システマチックに“やりくり”を考える必要があると思います。
これによると、措置予定(=実現?)、検討中(=棚上げ?でも希望はある?)、計画での措置困難(=門前払い?)、その他(=はなしにならない?)の4つに別れております。
ここでは、措置予定項目をあげます。
その他、特記すべき内容として、従来「困難」とされてきた営利法人による医療機関経営が、「検討中」ということになったことと最近話題の電子カルテによるカルテの保存が、依然「困難」となっていることかと思います。
この中で、一気に今後の医療が変わる内容のものは残念ながらないように思います。しかし、最近「営利法人」であるSECOMが、画像診断の部分に進出してきましたので紹介したく思います。
Hospi-net:CT/MRIの画像を、デジタル通信回線(ISDN)を通じて、医療機関より、ホスピネット画像診断センターに送り、これを専門医が読影氏、ファックスでそのレポートを返送するサービス。'93年4月より運用開始、5月現在小規模施設を中心に、30施設が利用。
この背景には、読影医の数と、医療器械の増加の間にギャップがあることと、読影医を招聘する人件費、さらに検査後の誤診、誤読影の予防に専門医の知識が必要であること、患者さんへ専門医が読んでいることで安心感を与えるといったことがあると思います。
国立がんセンターネット等に比べて、オープンで、汎用性があり(一般回線使用)、しかも価格は基本料金と読影1件いくらというように明朗会計、ビジネスライクであるという点で、今後伸びると思われます。このような芸当は、われわれ民間医療機関ではインフラ面で厳しく、通信事業体といってもいいSECOMならではの取り組みと思います。
民間企業が、このような隙間に進出することは今後ますます増えてくると思いますし、国の施策に比べ、オープンで、汎用性に富み、かつ安価なものとなりそうです。私は、今後益々大きな市場となっていく医療・福祉市場に、民間営利企業の進出は大いに歓迎すべきものと思います。医療業種と企業のノウハウの結集が、よりシステム化された、医療の運営に必ず役立つものと思います。
さらにこれを「社会保障給付費」(1994年度実績、社会保障研究所調べ)でみると、総額は約60兆5000億円。内訳は、年金で51%、医療で38%、福祉等11%の配分である。よく指摘される「年金5・医療4・福祉1」の割合だ。30兆円から40兆円台に伸びるのに5年、50兆円台に届くのに4年、そして今回の60兆円台に乗るまでわずか3年……と急ピッチの増加を示す。総額のうち高齢者関係の給付費が6割強を占めた。年金は引退後の生活保障であり、医療や福祉は年配の利用者が多い。高齢化率の上昇とともに給付費も上がる。
国民所得に占める社会保障給付費の割合は16%強という。ちなみにスウェーデン53%、フランス36%、ドイツ32%、英国27%、米国19%。先進国の中では、まだ少ないのだが、急速な長命化と少子化が負担率を押し上げていく。
大蔵省調べの「国民負担率」(国民所得約373兆円に占める租税と社会保障負担の割合)で見ると、租税23%と社会保障負担13%(公的保険のみ計上)の合計36%になる。この計算方法で比較するとスウェーデン70%、フランス63%、ドイツ53%、英国48%、米国36%。
政府の「高齢化ピーク時でも国民負担率を50%以内に抑制」との目標を達成する近道は、医療保険審議会の議論にあるとおり、自己負担増に違いありません。
福祉先進国のスウェーデンのスィ−ドブ貿易大臣(通産大臣)が、7月18日、当地(七尾市)に訪問の際に、福祉政策について、直接質問をする機会に恵まれました。
スウェーデンにおいても、社会保障負担が重要な問題であり、年金等の社会保障費を節減させるために、定年を延期しようとしたところ、逆に、若年者の失業率が上がるとの予測が出たとのことです。そこで、国は現在のところ、失業率を下げることを優先し、社会保障費の率が高くなっても、定年を延長せず、さらに早期退職報奨金(年金)までも導入しているとのことでありました。
バブルに乗らなかった(乗れなかった)のは、余裕がなかった医療・福祉の世界だけである。今、バブルのつけが、医療・福祉に乗りかかろうとしている。
スウェーデン | 69.6% |
フランス | 57.5% |
イギリス | 42.7% |
1995年度 | 1996-2000年度 | 2001-2010年度 | 2011-2025年度 | |
経済成長率 | 2.3 | 3.1 | 1.9 | 0.8 |
国民負担率 | 36.7 | 39.7 | 46.9 | 56.4 |
手取り所得伸び率 | 1.0 | 2.7 | 1.1 | -0.3 |
性・続柄 | 平均年齢(歳) | ||
総数 | 60.4 | ||
男 | 63.1 | ||
女 | 60.0 | ||
妻 | 71.4 | ||
長男の妻 | 54.2 | ||
長女 | 54.3 |
中間売上高 | 伸び率 | 経常利益 | 利益率 | 通期売上予想 | |
武田薬品 | 311,267 | 5.19 | 49,891 | 16.03 | 623,000 |
三共 | 220,472 | 6.74 | 53,749 | 21.38 | 420,000 |
山之内製薬 | 154,808 | 6.63 | 31,855 | 20.58 | 305,000 |
エーザイ | 128,402 | 2.05 | 21,142 | 16.47 | 257,000 |
大正製薬 | 122,493 | 5.73 | 36,872 | 30.10 | 230,000 |
第一製薬 | 114,137 | 4.92 | 23,618 | 20.72 | 222,000 |
塩野義製薬 | 113,391 | 2.70 | 10,285 | 9.07 | 225,000 |
藤沢製薬 | 111,265 | 4.60 | 12,061 | 10.81 | 222,000 |
田辺製薬 | 96,416 | 7.61 | 8,310 | 8.62 | 186,000 |
全社合計 | 2,096,163 | 4.33 | 355,359 | 16.95 | 4,435,400 |
売上高 | 伸び率 | 経常利益 | 利益率 | |
スズケン | 312,375 | 2.7 | 8,868 | 2.8 |
三星堂 | 139,096 | 1.9 | 3,326 | 2.4 |
東邦薬品 | 134,982 | 16.4 | 1,580 | 1.2 |
日本商事 | 107,300 | 3.4 | 1,238 | 1.2 |
サンエス | 71,465 | 0.1 | 1,267 | 1.8 |
主要各社合計 | 1,445,551 | 4.3 | 23,041 | 2.1 |
補助金の種類 |
病院 |
療養所 |
合計 |
病院経営費または療養所経営費 |
99,410,454 |
121,239,574 |
220,650,028 |
施設整備・設備整備費 |
9,615,025 |
5,473,747 |
15,088,772 |
資金運用部からの借入金残高 |
42,600,000 |
||
合計 |
273,338,800 |
運営費に対する補助等 |
国庫(県)補助金 |
11,410,535 |
他会計繰入金 |
524,518,631 |
|
小計(A) |
535,929,166 |
|
施設整備・設備整備等に対する補助金 |
他会計出資金 |
74,931,102 |
他会計負担金 |
37,913,975 |
|
他会計借入金 |
41,667,249 |
|
他会計補助金 |
11,465,448 |
|
国・県補助金 |
11,571,361 |
|
小計(B) |
177,549,135 |
|
合計 (A)+(B) |
713,478,301 |
|
企業債 |
346,124,729 |
公立病院への運営費に対する補助金の合計額は、国立病院へのそれをはるかに上回り、約5,000億円に達しており、施設・設備整備費も約1,800億円に達している。また、企業債も、補助金によって返還されることから、結局は、一般会計からの補助金とみなすことができる。これを加えると、公立病院には年間1兆円を超える公的補助が交付されていることになる。
国公立病院は上述のような各種補助金で手厚い保護を受け、さらに、公的機関なるがゆえに法人税・地方税などの課税もない。また、赤字が生じた場合には一般会計−つまり国民の税金−から損失補填を受けている。行政は、この説明として、国公立病院等は政策医療として特殊疾患診療・不採算医療などを担当していることを理由に挙げているが、それに該当する病院はほんの一部であって、大部分(特に都市部において)は一般病院として、民間医療機関と競合する形で医業を行っている。
これほどの補助金を受けながらも、なおかつ、赤字経営の国公立病院が存在するという事実は、不採算医療を考慮に入れたとしても、現行の社会保険診療報酬が病院運営の確保はもとより、施設・設備の改良等にはまったく及ばないことを物語っている。
そして、このような状況の中で、民間病院が必死の努力を続けて経営しているのに対し、国公立病院のみが多額の補助金によって保護され、しかも、それによって民間の経営を圧迫しているという事実は、目下の日本経済において支配的な「市場原理」「規制緩和による公平な競争原理の確立」などの視点から見ると、まったく不合理の一言に尽きる。
昨今、政府の「規制緩和推進委員会」が「医療における規制を緩和し、医療に競争原理を導入すべきである」と提言している。しかし、競争原理を基底から阻害するような条件、つまり、公的助成制度が生み出す不平等を放置したままの状況下では、その提言はナンセンス以外の何物でもない。
これらの国側の方針と、日本医師会、各病院団体や製薬協とのつばぜり合いが、これから数ヶ月続いてくるものと思われる。
しかし、冷静に現実を見詰めれば、少なくとも薬価引き下げ、材料費引き下げ、長期入院に対する入院費逓減制は必ず、来春の改定で実施されるように思う。この引き下げ分が技術料に反映されるか、反映されずにそのまま削減となるのかどうかが鍵になってくるように思う。
地域による診療報酬の違いは、キャピタルコストの違いであって、人件費、材料費には無関係である。現状の診療報酬にキャピタルコストの考え方は入っていない。地域による評価はキャピタルコストの考え方、資本蓄積としてどれだけ(医業収入の何%)を認めるかという議論になると思われる。
疾病分類の作成なくしての定額性は危険であると思われる。
定額性をとるならば、DRG,PPSではなく、保険者の民営化であるHMOも視野に入れる必要があると思われる。
国民医療をめりはりを持って分けていく必要があると思われる。どうしても必要な医療に対しては公費負担。患者の要望・心配などに対して応える医療に対しては一部自己負担。まったくの欲求以外何物でもない医療に対しては全額自己負担というのも、一手のように思われる。ここでは、患者のニーズを判定する機構が必要となり、そのために新たな公的機関の設置は行革に逆行する。それ故、前述の民間機関であるHMOに判定を担わせることもよいかと思う。
室料差額、特定療養費、食事療養費、混合診療、自由診療などの自己負担に対して、患者側の満足と納得を提供できる多彩なメニューの提示が必要になってくる。すなわち医療機関側がいかに制度に適応できるかが問題となってこよう。