象徴的なのが「企業による病院経営」の議論。医療法は営利目的の病院開設を禁じており、営利法人である企業は一部の例外を除いて病院を経営できない。
ニュービジネス協議会(大川功会長)は「営利法人による病院経営を促進すれば競争が生まれ、経営の創意工夫、効率化が進む」と強調する。人口の高齢化による疾病構造の変化や在宅医療、健康増進など患者のニーズの多様化に対応するには、サービス競争を持ち込むのが近道との立場だ。
「企業は利潤追求のあまり、手間のかかる重傷患者などを切り捨てかねない」という日本医師会の主張に対しては、「患者の病院選びは慎重で、劣悪な病院は淘汰される」と反論。企業参入による効用を訴えている。
医療関連サービス業会は、「病院経営のノウハウを吸収できれば、新しい病院向けサービスを開発・提供できる」(寝具リース最大手のワタキューセイモア)と、新市場創出をにらんだ規制緩和への期待が高まっている。
医療法人が剰余金の配当を禁じられている点については「インセンティブが働かない仕組みで、誰が努力するだろうか」(セコム)と、現行システム下での医療レベルアップを疑問視する向きもある。適正水準の利益を確保して、経営陣や病院職員などに還元する仕組みが確立されれば、生産性の向上につながるとの見方が出始めている。
「病床規制」は全国を344に区分した医療圏ごとに必要病床数が決められ、これを超えて病院の開設や増床をできないという制度。病床数の地域的な偏りを是正するという趣旨だ。しかし、「新陳代謝が進まない“統制経済”」との批判がある。規制が緩和されれば、意欲のある医療機関が増床で事業拡大を図るといった経営の自由度・選択肢を手にできるとみられている。