最初に業務の見直しをする際、最も効果が上がり、しかも導入においてトラブルの少ない分野で取り組むことは、すべての業種において成功の鉄則であると考える。そこで、病院の業務の中で、法的規制が比較的少なく、一般企業における材料の仕入と販売という形態と何なら変わるところのない診療材料の分野に取り組むべきであるという結論に達した。しかも、当時7,000万円強にのぼっていた倉庫と部署在庫の見直しは、即効性のある業務改善につながると思われた。
しかしながら、予想に反して、その後のすべての業務見直しにも共通する大変な労力はその時点では知る由もなかった。
1)在庫管理を誰が行うかの7つを設定した。この問題点を軸としてその後の取り組みを行っていった。
2)適正在庫の設定を誰が行うか
3)期限切れの把握を誰が行うか
4)誰が配送するか
5)医事請求との連動を誰が行うか
6)材料の選定を誰が行うか
7)在庫管理経費を誰が支払うか
まず、平成5年4月、彼らは病院のTQC(Total Quality Control)のテーマとしてこの問題を取り上げ、当院に存在する8病棟のうち、1つの病棟をモデル事業として果敢に取り組んだ。診療材料の定数を設定し、用度課職員による管理体制を敷くこととした。しかしながら、定数設定の労力、物品搬送の労力の割りには1病棟の物品管理からそれ以上に広がらず、病院全体の業務改善につながる問題とはなり得なかった。系統的なシステムの導入が必要であると思われた。
しかし、ここでの問題は、「誰が」管理するかである。先の自己完結型同様に用度課職員による管理は、マンパワー上不可能であった。また、看護婦の本来の業務は患者に対する看護であって、物品管理業務は看護の質とは全く関係のない間接業務である。この現場の看護婦による間接業務に依存する管理である以上、ここでの失敗も明らかなものとなった。
当初は順調に推移した。しかしながら、次第に価格、特に新規の材料価格の高騰が、地域外の他病院との連携のもとでの価格比較で指摘できるようになった。これに対して、まず事務方、ついで院長と幹事会社との間における押し問答の末、業者側のホンネとして、在庫管理経費の材料価格への上乗せの実態が明らかになった。
少しでも安く導入しようとする価格交渉と在庫管理経費の上乗せとは相反する命題である。このあたり前ともいえる経済論理に気がついた時点で、業者による在庫管理システムは終りを告げることとなった。
次号で、Just in Time & Stocklessの考え方で導入した当院の院外SPDシステムの概要と、その導入効果、さらに新たな展開について詳述したい。