すでに品質保証は医療界よりも他の製造業、サービス業においてはなくてはならない生き残り策として取り組まれている。そして、そのツールは枚挙にいとまない。そこでは、TQC(Total Quality Control)活動やカイゼン(KAIZEN)運動など日本が世界をリードする活動にはじまって、最前線においてはERP(Enterprise Resource Planning)やCRM(Customer Relationship Management)と呼ばれるようなネットワークを駆使した経営と品質の管理手法が取りいれられている。これは、野中ら1)が提唱する個人が持つ暗黙の知を誰にでも利用できる形式の知へ表出するとういナレッジマネジメント(Knowledge Management)を応用した管理手法であると考えてもよいかもしれない。
医療の世界ではその対象が人に対するサービスであり、かつ生命にかかわるサービスであるという特異性はある。しかしながら、決して特殊な業種ではなく、他の業界で成功を収めた品質管理手法がそのまま利用できないはずはない。日本経済低迷の中で懸命に成長を続ける優等生企業は多々認められる。そのような企業がまさに生き残りをかけて取り組んでいる手法を、われわれも積極的に取り入れてこそ淘汰の時代の病院生き残り策として活用できるように思う。
TQC活動はもともとアメリカで生み出されたものであるが、日本で花咲いた手法として理解されている。戦後まもなく導入され、昭和50年代に各企業が先を争って導入した。病院における最初の導入は昭和57年ごろとのことであり、当院では昭和63年3月に「ふれあいサークル活動」として導入し、現在36サークルが活動している。さる9月に第23回の発表大会を終えた。TQC活動は@顧客指向、A全員参加、B科学的、合理的解析手法、C小集団としてのQCサークル主体の4つを原則としている。
この4原則からも明らかなように、TQCの手法はトップダウンではなく、ボトムアップの品質管理運動である。現場各部署における小単位のQCサークルは、自部署における業務、患者サービス上の問題点をあげ、これをQC手法と呼ばれる客観的データを重んじる解析法で解決策を模索し、評価する。だれでも、QC手法に則ればそれなりの結果を生む出せるといった特徴がある。当院では、この活動から在庫管理、待ち時間の短縮、伝達業務の見直し、サービス改善など数多くの成果を上げてきた。
最近、TQC活動から撤退する企業、病院が多いと聞く。現場で全く問題点がなくなったとは考えにくい。しかし、閉塞感が出てきていることも事実のようである。というのは、小単位のサークルでの問題解決努力では企業全体のシステムや業務の見直しにつながらないことや、せっかくの問題解決が他の部署で取り入れられない(水平展開できない)ことなどが問題となってくる。さらに、企業や医療を取り巻く環境の変化のスピードはボトムアップを待っていられないという心理が経営側にも働いているようにも思う。
いずれにしても、現場に問題点はなくなるわけでもないし、経営者がすべての現場の業務に精通するわけにもいかない以上、TQC活動を存続させていく意義は十分にあると思われる。
当院のQCサークルの活動方針を紹介しておく。
一、患者様本意のサービスを積極的に提供しよう
一、人間性を尊重した生きがいのある明るい職場づくりをしよう
一、自己研鑽を積みチャレンジ精神を発揮しよう
最後に、QC活動は品質管理活動の1つのツールにしか過ぎないことを改めて強調したい。その上でこの活動の特色を考えてみると、まず病院管理者の品質管理に対する確固たる姿勢を提示してこそ成り立つものと考える。その姿勢のもとにおける全員参加型の活動では行う病院職員の満足感、達成感や連帯感を生み出し、従業員満足度(ES:Employee's Satisfaction)の高揚が期待される。それが最高の品質のための原資と担保になるであろうと確信している。
図2 |
図3 |
図5 |
図6 |
図7 |
図8 |
項目
(What) |
個別目的 (Why) |
担当 (Who) |
場所 (Where) |
日時 (When) |
具体的項目 (How) |
患者満足度調査の継続 |
調査方法と活用の検討 |
HD 全員 |
HD 室 |
1 回/半年 |
調査集計、活用方法 |
ガイドブックの充実 |
内容の見直し、補充 |
サークルメンバー |
HD 室 |
1 回/半年 |
追加事項の検討、内容充実 |
システムの整備 |
他部署と協力体制強化 |
HD 全員 |
HD 室 |
1 回/半年 |
連携、情報の定期的提供 |
項目・時期 |
歯止め期間 |
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調査項目 |
よい |
普通 |
悪い |
透析職員の対応・印象 |
6 |
0 |
0 |
病院職員の対応・印象 |
6 |
0 |
0 |
再度来院時に当院を利用されますか |
はい |
いいえ |
わからない |
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0 |
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