「船上のメリークリスマス」 page 3
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十数分前― 「*さんには お会いにならないのですか」 停船したグラナダ号の元へと向かう軍用ヘリの中。 窓際の席に不自然な格好で座り、爪を噛みながら外の景色を眺めている青年に、隣で書類に目を通していた老紳士が声をかけた。 「はい・・ @さんを無事に救出するための、私の役目は終わりましたから」 と、青年―L―の左手に握られていたPDAがCall音を発した。 LはPDAを膝に乗せると、上部で点滅を続けるLEDを黙って見つめた。 十秒ほどで、Call音は鳴り止んだ。 「私から*さんにお伝えしましょうか?」 ワタリの問いかけに、Lは しばらく考えていたが、首を横に振ると、PDAをポケットに仕舞い、数分前と同じ姿勢に戻った。 「承知いたしました」 ワタリは微笑むと、再び書類を読み始めた。 それを微かに横目で確認したLは、そろりとPDAを取り出して膝に乗せた。 彼に会うつもりは無い。 特別な繋がりを持てば、今後、私に関わったために、彼を今回の事件のような危険にさらす事になるかも知れない。 前途有望な若き捜査官・・・彼を、巻き込んではいけない。 それでも・・・・ 私を心から信頼し、命をかけてくれた彼が無事で生きている姿を、どうしてもこの目で確かめたかった。 「これより、グラナダ号ヘリポートに着陸します」 パイロットの声に LがPDAから窓の外に視線を移すと、眼下には巨大な客船の姿があった。 Lは大きく目を開くと、まるで子供のように窓に噛り付いた。