「船上のメリークリスマス」 page 4
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ヘリポートに辿り着いた俺は、ヘリから降りてきた捜査官達にハウスキーパーとジェフリーを引き渡した。 未だにノビているベースボールマニアの爆弾魔は別として・・・ジェフリーには後ろ髪が引かれる思いがした。 「Lの言った通りでしたね 「*さんを誘拐したのは失敗でした」 FBIでも経験の浅い人間を選んだはずだったのに、まさか爆弾処理のエキスパートだったとは・・ そんな軽口を言ったジェフリーが、ふっと真面目な顔になって俺を見た。 「でも・・・貴方に会えて良かった」 握手を交わして別れた。 頼り無げな彼が最後に見せた笑顔が印象的だった。 ジェフリーを見送っていた俺の視界の先に、別のヘリから降り立つ数人の人物が映った。 スーツ姿の男達の中に、よく見えないが、白い服を着た人物が一人。 女性捜査官だろうか・・・? しかし、直ぐに事情聴取が始まり、その疑問は俺の中から消え去ってしまった。 半時間程の事情聴取が終ったと同時に、急激な疲労感が俺を襲った。 考えてみれば拉致されれてから今日まで、ろくに食事を取っていない。 そして、この半日は、豪華客船の中を走り回り、数え切れない数の爆弾を解体して・・・疲れない方が無理というものか。 そのままヘリに乗り込んでしまえばよかったのだろうが、俺には この船を離れる前に、どうしても もう一度行きたい場所があった。 ついさっきまで自分より大柄なハウスキーパーを担いでいたはずなのに、疲労を認識した途端 掌を返す。 人間の体は いい加減なものだ。 いよいよ足に力の入らなくなった俺は、たどり着いたプロムナードデッキの端で崩れ落ちるように座り込んだ。 もたれた冷たい鉄壁の向こう側に、ブリッジへと続くエレベーターと救命ボートがある。 そこは俺にとって、思い入れの深い特別な場所だ。 この船に残って任務を続けるか、救命ボートで脱出するか。 捜査官と言えども、自分の命を守る権利がある、どちらを選んでも これまでの貴方の行動を評価する、Lはそう言った。 でも正直、俺には任務を続ける以外の選択肢は存在しなかった。 簡単に命を投げ出せるほど無鉄砲じゃない。 ただ俺は、「Lと力を合わせて立ち向かえば、必ず任務を遂行出来る」と信じて疑わなかった。 俺の答えを聞いたLが、暫しの沈黙の後に言った言葉は、今でも鮮明に覚えている。 『貴方のような相棒が居てくれると心強いです 貴方は信頼できる男性です』 Lが返してくれた信頼に心が震えた。 たった半日だけの、世界で最高の俺の相棒。 彼の声を聞く事は、もう二度と出来ないのだろうか・・・