1998年2月、郵便番号が7桁となり、これを機に新型区分機が導入された。引受局では、新型区分機で新郵便番号とあて名を合わせて読み取り、住所全体を表わすバーコードを印字し、以後、このバーコードを読み取って処理し、配達局では、バーコードを読み取り、郵便物を配達順に並べるところまで機械化できるという[*1]。
バーコードには、カスタマバーコード、局内バーコード、IDバーコードの3種がある。
料金割引を受けようとする場合に、差出者があらかじめ郵便物にカスタマバーコードを印字する。カスタマバーコードの形と、カスタマバーコードの体系(部分)を別図に示す[*1]。カスタマバーコードついては、参考に記したマニュアルなどに詳しい。
[参考文献等]
(a) 新郵便番号制マニュアル(郵便局)[*1]
(b) 郵政省のホームページ、報道発表資料、郵便関係
96/09/12 「新郵便番号制導入に伴う料金減額制度の改善」関連資料…1〜3
URL ; http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/yubin/index.html
区分機で郵便物に記載された新郵便番号とあて名を読み取る等により住所を表すバーコードで、透明または極淡い色の特殊なインクで印字される[*1]。実際に印字されたバーコードを下図に示す。下段が、局内バーコードである。
区分機で読み取りが完了しなかった郵便物には、ビデオコーディングシステムを用いIDバーコードが、透明または極淡い色の特殊なインクで印字される[*1]。実際に印字されたバーコードを下図に示す。上段が、IDバーコードである。
局内バーコードは、79本のバーで構成され、住所表示部と新郵便番号部とに分けられる(上図)。局内バーコードの形と体系を下図に示す[*2]。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
8 | 9 | − | C1 | C2 | C3 | C4 | C5 |
局内バーコードの形と体系 |
住所表示部は、47本のバーで構成されており、最初のバーは、スタートを、最後のバーは、ストップを表す。上図で示すように、1桁は、3本のバーで構成されるから、45本のバーで、15桁の情報を表していることになる。住所表示部は、情報桁と冗長桁とに分けられる。情報桁は、住所(丁目−番−号など)を表し、冗長桁は、誤り検出訂正のために用いられる。
新郵便番号部は、32本のバーで構成されており、最初のバーは、スタートを、最後のバーは、ストップを表す。残りの30本が、新郵便番号部で、7桁の情報桁と3桁の冗長桁で構成されている。
[参考文献] バーコート処理方法およびバーコード処理システム(公開特許公報;特開平9-212569)[*2]
郵便物に実際に印字されているIDバーコードと参考に示す論文[*3]とを対比してみた。
IDバーコードは、76本のバーで構成されており、最初のバーは、スタートを、最後のバーは、ストップを表す。残りの74本で、1桁の制御桁、11桁の情報桁、および5桁の冗長桁を表す。情報桁は、3桁のマシンID(マシン識別番号)、2桁の日付(郵便物処理日)、2桁の時刻(郵便物処理時刻)、4桁のシリアル番号(郵便物の一連番号)からなる。なお、情報桁は、4本のバー、制御桁、冗長桁は、5本のバーで構成される。
・マシンID(3桁;M1〜M3) … 001〜999。区分機を識別する番号。制御桁のバー
b を用 いれば、0001〜1999を識別することが可能(1001の存在を確認)。
・日付(2桁;D1〜D2) … 01〜99(00)。1月1日を起算に1ずつ加算。平年の4月10 日は、99日目にあたる。よって、00は、4月11日を表し、4月12日が、あらたに、1日目 となる。
・時刻(2桁;T1〜T2) … 01〜72。1時間を3等分し、1日24時間を72に分割。01は、 0時00分〜0時20分を表す。
・シリアル番号(4桁;S1〜S4) … 0001〜9999。区分機の処理能力が、3万通/時であ れば、20分換算で1万通。1万通を越えることになれば、制御桁のバー
a を用いて、00001 〜19999まで可能。
冗長桁(p1〜p5)の各桁は、5本のバーで構成されている。バー e が、10を表していることが判れば、体系は、自明である。
制御桁(C)のバー a 、b については、情報桁のマシンID、シリアル番号を参照されたい。バー
c 、d 、e の使い方については、不明である。
[参考文献] 次世代郵便用IDタグバーコードの符号化法について(第19回情報理論とその応用シンポジウム;1996)[*3]
IDバーコード、局内バーコードの数値情報の読み方を試みる。
マシン識別番号は、区分機に固有の番号といわれる。このマシン識別番号と区分機設置局との対応を試みた。
IDバーコード、局内バーコードは、リードソロモン符号の理論を応用している。カスタマバーコードは、別のシステムである。ここでは、リードソロモン符号理論のさわりを記す。ただし、符号理論としての厳密さに欠けることを容赦されたい。
ガロア体 GF(16) の原始多項式 f(X) = X4+X+1 の原始元をαとする。このとき、f(α)
=0 となる。
(注) ここで、GF(16) の 16 は、2 の 4 乗を表す。また、X4 は、Xの 4
乗を表す。同じように、αm は、α の m 乗を表す。
局内バーコードの数字、記号( 0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,-,C1,C2,C3,C4,C5 )は、このαをもとにして、α0,α1,α2,α3,α4,α5,α6,α7,α8,α9,α10,α11,α12,α13,α14,0
に対応する。IDバーコードについても同様に考えることができる。
さて、2進数の世界では、 0 + 0 = 0 , 0 + 1 = 1 , 1 + 0 = 1 , 1 + 1 =
0 が成立つ。
GF(16) では、α + α = 0 , α2 + α2 = 0 , α3 + α3 = 0 も成立つ。
f(α) = 0 から、α4+α+1 = 0 この両辺に、α+1を加えると、
α4+α+1+(α+1) = (α+1) → α4+(α+α)+(1+1) = α+1 → α4 = α+1
となる。したがって、つぎの関係が成立つ。
α5 = α2+α α6 = α3+α2 α7 = α3+α+1 α8 = α2+1 α9
= α3+α α10 = α2+α+1
α11 = α3+α2+α α12 = α3+α2+α+1 α13 = α3+α2+1 α14
= α3+1 α15 = α0 = 1
これを続けていけば、αn を、1,α,α2,α3 で表わすことができる。
局内バーコード、IDバーコードの冗長桁で表現されるベクトルと検査行列との積が、零行列になるという符号理論(リードソロモン符号)により、バーコードの誤り検出と訂正が可能であるといわれる。上の関係式により、この積の演算が可能となる。
参考文献 ; 符号理論入門(岩垂好裕;昭晃堂;1992)