なぜ四国遍路なのか


自分探しに巡礼する人が増えているという。そこに何があるんだろうか

目的はダイエット。身と心のぜい肉を落とそう


上はスタート直後の筆者。下はそれから
20日後の姿。この間に体重は約5キロ
減っていた。さて心のぜい肉はとれてい
るのか。
 私は仏教徒でもないし、信仰心など平均的日本人程度にしか持ち合わせていない。四国八十八カ所巡礼を思い立ったのは、近ごろ若者や学生たちの「お遍路さん」が増えているというニュースを耳にしたことからだ。いわゆる「自分探し」ということなのだろうが、日本の、決して特殊でない四国の地に、自分を発見できる何があるのだろうか。若者たちは、なぜ、八十八カ所を歩くのか、知りたくなった。

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 話はそれるがアタック33に臨むにあたって、何をすべきかと考えた。好きな歴史ものの舞台を訪問するとか、最新の情報産業を見てくるとか、語学研修にでかけるといったことも考えてみた。実際、会社には中国への語学研修の短期留学というプランで提出していたが、この計画が昨年、自分の異動期に引っ掛かり、その後は年間企画、選挙などに忙殺され、一年延期せざるを得なかった。そして今年もスポーツ行事の多い夏にとるのが支局業務に最も負担をかけないということから、時期的に留学計画も困難になっていた。さて、何をしようかと思っていた折、四国遍路のニュースを耳にし、八十八カ所を歩いてみるのは「一ヵ月まるまる使って」とか「アタック(挑戦)する」といった研修のニュアンスに合っているんじゃないか、という気がしてきた。

昔は貫禄、今はぜい肉

 特段、信仰心がある訳ではない。何か願をかけるつもりもない。一つは、新聞記者十年目を迎え、日本の社会を人々の視点で見ておきたいということ。面白くないといわれる日本の新聞が、これから何を書けばいいのか、そこから見えてくるのではないか。そして入社十年の中で、こういう事件はこう「処理」するのだとか、こういう問題は「こう書く」のだとか、あるいは記者の権威を振り回したり、新聞的な正義感を振りかざしたりといった「ぜい肉」がついていないか。四国巡礼をしたところで、そこに何があるのかは定かではないがないが、そのぜい肉を山野を歩きながら少しでも落とすことができるのではないか。昔なら新聞記者の貫禄、と言われたことも、今は肉体同様、貫禄はぜい肉でしかない。

 私にとって、ぜい肉は精神的な問題だけではないのだ。入社以来、二十キロ近く体重が増えている。身軽とは言い難い体格になってくると、取材も機敏とは言い難い。炎天下、記者の原点である「足」で稼ぎながら、心身のダイエットをしよう。それが旅のねらいのひとつである。

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