四国遍路のコース


徳島県鳴門市を出発して四国沿岸を一周。ゴールは香川県長尾町だ

寺を巡ることより、その道程が修行の場になる


丸数字は札所を示す。実際の行程では必ずしも札所の順番
にならないところもあった。内陸部にある札所は、すべて
山の上にあると考えていい。沿岸部といえども、岬や岸壁
など、寺は険しい地形にあることが多く、あなどれないと
ころばかり。道は鋪装された道路もあるが、昔から巡礼者
が使ってきた「遍路道」を保存する努力がなされており、
登山道などに、歩き遍路のための道標がいくつも立てられ
ていた。
 四国八十八カ所巡礼は、徳島県鳴門市にある一番札所、霊山寺からスタートする。香川県長尾町の八十八番札所、大窪寺まで、四国を時計周りにぐるっと一周する道程である。最近でこそ車や観光バスを使って簡単に巡ることもできるようになったが、昔から「歩き遍路」と呼ばれる全行程を踏破するものとされていた。

 距離にして約千キロ。その間には四国最高峰の剣山地や、石鎚山脈などの難所を越えなければならないし、寺から寺までが歩き通しで三日がかりという厳しい行程も余儀なくされる。空海ゆかりの地を巡るために遍路するのだが、むしろ遍路の目的はこの厳しい道程にあるという。寺から寺へ、人に出会い、自然に抱かれながら歩きに歩くことが、遍路であるのだろう。

 全行程を歩けば通常五十日以上かかるとされているが、現在の歩き遍路は、八十八カ所を一度に回る「通し打ち」ではなく、一週間ずつといった期間に分けて回る「区切り打ち」がほとんどという。八十八カ所を通して打つのが体力的に厳しいこともあるが、仕事を持つ者にとっては休みが取れないという事情もある。

八十八カ所全てに挑戦

 ところで、アタック33の一ヵ月で、どうやって遍路をするか思案した。よほどの健脚でも四十日程度はかかるコースである。八十八カ所の途中まででいいから、歩き詰めに歩くことを選ぶか、期間内に八十八カ所すべて回ることを優先して公共交通機関などを利用するか、選択を迫られた。

 とりあえず歩き始めると、答えは簡単だった。後者である。アタック33というチャンスだけに、何か成し遂げた記念のようなものが欲しいということがあった。それにも増して、ふだん歩き慣れておらず、運動もせず、入社時に比べ二十キロ近く肥満した私にとって、想像以上に辛い道程であることがすぐに分かったのである。言い訳がましいが、全行程歩くとすると、宿泊施設が都合良く見つからないので、野宿覚悟となる。装備も大きくなるし、危険も多く、体力も消耗する。

 この際、「できるだけ頑張る」ということを主眼として、無理せず八十八カ所の全行程制覇をめざした。

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