四国遍路の装備


お遍路さんの白衣は、死に装束。八十八カ所巡礼の後に生まれ変わるためだ

最低限の装束にTシャツ姿で、さあ出発だ


●ザック・中には蒸れない素材のゴアテックス製の雨具上下、ザックカバー、洗面具、虫よけなど薬類。納経帳、地図。当初は3日分の着替えを入れたが重くなりすぎた。最後は1日分に。電子メールのやりとりのための情報機器も携行した。

●輪袈裟・霊場礼拝の正装であり、遍路の道中修行の身支度として身につけることになっているが、汗を吸って異臭が。途中でやめてしまった。

●金剛杖・最後まで持ち歩いたのは、便利だということ。登坂の助けになるだけでなく、やぶの中を歩く時に草をはらったり、ヘビを払ったりするのに大いに役立った。

●カメラ・本格的に写真を撮りたい場面に何度もであったが、持参したのはコンパクト1台。惜しいが身軽さには代えられない。

●ウエストバッグ・中にはフィルム、携帯電話、ラジオ、タバコのほか、線香と納めるお札、筆記具など。線香は最後は粉々になってしまった。

●シューズ・全米ウォーキング協会推薦のものを新調した。手入れなしに全行程問題なし。それでも柔な私の足には何度もマメができた。


 お遍路さんの格好といえば、白衣に菅がさと相場が決まっている。すげがさは実用的なものだが、死に装束で歩くわけだ。一度死んだものとして、巡礼が終わったときには新しい自分に生まれ変われるというシステムになっている。白い手甲脚絆、手に鈴を持つのだが、観光バスで巡礼する人たちは、このような装束をしているが、歩き遍路ではまず、いない。

 最近の歩き遍路たちはウォーキングのベテランたちが多く、服装にはあまりこだわらず、笠や金剛杖、輪袈裟といった簡単な装束で、あとは普通の山歩きの装備で歩く。足袋にわらじはシューズになり、ずた袋の代わりにザックを背負って、現代のお遍路さんは歩くのだ。

異臭…三日で手放す

 私もTシャツにズボンにザックを背負って、四国に向かった。一番札所霊山寺で遍路用品を売っているので一通りそろえることにした。やはり白衣は必需品と言われ、白衣やすげがさ、金剛杖、鈴などを買い込む。鈴は魔よけで、チリンチリンという巡礼の場面でお馴染みの音がする。

 ところが歩き始めてみると、白衣、菅がさ、輪袈裟などは汗を吸って三日で異臭を放ち始める。しかも汗を吸ったものは猛烈に重い。洗っても翌日までに乾かない。結局、三日で白衣はやめてしまった。すげがさや輪袈裟もその後数日でやめてしまい、最後は金剛杖だけになった。

 今回驚いたことの一つに、新素材繊維がある。ウィックロンなどの化学繊維は吸水性が綿の五倍あり、乾く時間は四分の一程度。この新素材のTシャツのおかげで炎天下を終始快適に(とはいえ暑いが)乗り切ることができた。

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