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山下綺麗の日記 壱

 

雲一つない空なのに抜けるような青じゃない。なんだか空の色はくすんでいる。きっと、本物の夜を持たない街は本物の空も持たない。抜けきらない青空の中を図書館に向かった。自転車で風を浴びながら緑に茂った桜並木の河川沿いの自転車道を滑るように抜けると湖畔の図書館がある。桜の木漏れ日は、花が散ったあとが好きだ。今年の桜は早く咲いて早く散った。学校が始まるときには桜は咲いていない。

マグロ漁はギャンブルに似ている。ギャンブルそのもの。一匹数百万円から数千万円の値が付くマグロは数匹釣ればあとは遊んでくらせる。一回マグロを釣ると普通の漁師には戻れない、と言った漁師もいる。マグロが跳ねるのが見えると続々とマグロ漁船が集まってくる。たった一匹の宝物を目指して集まってくる。世界中のマグロは日本に集まる。世界の新しいマグロ漁場を探して企業も飛び回る。大間の本マグロが最高級品らしい。溶けてしまう、涙が出るほどおいしい、という話。今や幻とまでいわれる。マグロの白子のステーキは、マグロのワタは殆どが船の上で食べてしまうので特注のルートで入手する。ぴょーぴょーぴょーマグロがどんな声で泣くのか知らないが、ぴょーぴょーぴょー、マグロのあらは寿司屋から別な店に行く。頭は甲焼き、皮も捨てるところがないそうだ。それはマグロにとって名誉なことか、いやいや、きっとマグロはどこもかしこも食えない魚になりたがっている。ぴょーぴょーぴょーぴょーぴょー。マグロの声が聞こえてくる。ぴょーぴょーぴょー。

アメリカでの日本の印象は、動物にたとえるとクラゲらしい。政治の印象が国家の印象になるのは仕方のないこと。日本に来た人が来る前に比べて変化した印象は、親切だったということらしい。私に言わせれば、お節介。パリっ子のように、無関心ならばどんなに優しい街になるだろう。世界の町中で、袋一杯に入った果物をぶちまけて反応を予測するという番組を見たことがあるが、ロンドン、ニューヨーク、ケニア、東京、大阪、エトセトラ、その中で、パリだけが転がるオレンジをちらりと見ただけで無反応。

自殺未遂の方法は話す人によって様々、「真実に意味はない」とはこういう場合によく聞く言葉、みんな虚構の事実に満足して楽しんでいる。剃刀で手首を切るのが古典的なやり方だが、剃刀というのが今は使われなくなったので、果物ナイフになったようだ。首つり、飛び降り、入水、ガス、などは大げさなので噂話だけでは信憑性に欠ける。私は特に広げもしないが、止めもしない。「あっ、聞いた聞いた」と軽く乗って調子を合わせる。こういうのが一番最低。傍観者のポーズを守りながら、噂を盛り上げている。

マジックマッシュルームは、食べたりすることを目的に売ることは薬事法違反になるが、観賞用ではOK。成分自体は麻薬取締法で禁止されているが、約400種あるキノコ自体の販売は禁じられてはいない。一般には合法ドラッグと呼ばれているが、厚生省では、脱法ドラッグと呼んでいるらしい。どんな夢に逃げ込んでもいつかは醒める、現実が夢の中と区別がないような私にはきっと無縁だ。iモードでも通信販売しているので、やったことのある人も周りにいることだろう。でも、私のグループは真面目グループと陰では呼ばれているぐらいなので、そんな話は出ていない。どうせなら、もっと凝ったニックネームにしてほしい。

どうして、友達の数を競いたがるのだろう。プリントクラブの写真の数、携帯の登録数、メル友、クラブ、クラスメート、塾、でも、本当の友達はどこにもいない、そんなもの、百年に一度の奇跡。そうして、プリクラの写真の数にうらやむ私がいる。誰とでも仲良くできることは、やっぱり自慢だ。きっと、これが私のコンプレックス。体温がない友人なら多い方がいい。