▲Pumpkin Time▼ 小説・俳句 山下綺麗の日記 山下綺麗の日記3

山下綺麗の日記 弐

 

 犬を飼いたい、猫と暮らしたい、ウサギと散歩したい、ワラビー、箱亀、コアリクイ、動物に囲まれて生きていきたい。でも口には出せない。私が山下綺麗になったのは一年前、それまでは、木山綺麗。似たような名前でも、別は別、同じ姓になったとしても、他人は他人、何を考えているかは分からない。だから、よい子を演じ続ける、手ひどく冷たく捨てるまで。綺麗ちゃんはよい子と言われるのが私の自慢。人生は全てが演技、演技ができない人は狂人。

 本当の父親は、実際に父親だから、今の父親は、おじいちゃんと呼ばなくてはならない。母方の祖父母の家にやっかいになっている。姓も母方のに変わった。でも私を養っているのは、彼ら。私の親は親じゃない。親は親の役目を果たして親だろう、親代わりは親かどうかはしらないが、少なくとも、親代わり以下は親じゃない。

 もう街が死んじゃってるね。街は眠らないし鼓動もしているのに死んでいると感じるときがあるが、それは街が死んでいるのではなく、私の心が死んでいるのだろう。本当に死んだ街はゴーストタウンという。でもゴーストなのだから魂は残っているのだろう。

 町には花があふれている。至る所から色がこぼれ落ちている。上品に可憐に鮮やかに密やかに賑やかに、そして綺麗に、灰色のコンクリートの横に咲く。椿や、名前も知らない様々な花が様々な色で。