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山下綺麗の日記 四

 

 山下綺麗、十四歳、天気小雨。
 雨がきらい。ぬれるからきらい。自転車にのるとき合羽をきるのがきらい。傘をさしてあるくのがきらい。

 ヤキソバパンは変。うどん定食もラーメン定食も変。炭水化物に炭水化物をおかずにするような真似はやめましょう。でもすきなんだけど。おはぎやあんこ餅も変。米に砂糖をかけるな。中国人はハムにジャムをつけるそうだ(美味んぼでよんだ)。変だ変だ。すき焼きも変。肉に砂糖をまぜるな。肉は肉だ。微妙なのは、あれ、あれ、イチゴに砂糖をかけるの。果物はそれだけが一番おいしい。

 私の心は大理石。冷たく堅く、柔軟性がない。発想力も独創力もない。やさしさも感受性もない。化石をだいて、白くかがやく。壊れるときはがつりと割れる。

 すぐにおもいつくような比喩はかならず言葉になっている。桜吹雪、蝉時雨、月羊、雲をつかむように、雲の上、石ころのように、野良犬のように、猫をかぶる、電光石火、鏡華、水と油、まるで蒸し風呂、生き地獄。だからこの頃の比喩は長い。秋の日本海に漂う木の葉のように桜がゆらゆらとちっていく、みたいに。