▲Pumpkin Time▼ 小説・俳句 山下綺麗の日記6 山下綺麗の日記8

山下綺麗の日記 七

 

 予定より早く、父親が帰ってくるらしい。結構まじめにやればやれるんだ。あいつこそ自殺でもすればいいんだ。

 この年で人生に疲れるなんて世の中間違っている。いったい私は何に疲れているのだろう。何もない人生なのに。たいしたことは何もない人生なのに。何が起ころうが、何が終わろうがたいしたことは何もない。

 この世に権威なんてどこにもない。あるのは暴力だけだ。この世で、真実などどこにもない。結局は多数決で決まっている。この世に家族なんてどこにもない。この世に愛なんてどこにもない。
 尊敬のない権威はただの暴力。この世のどこかに逃げてしまいたい。

 全知全能の神がいるのなら、人間を作ったりしない。完全無比の人間しか作らない。全知全能の神がいるとしたらば、天国にいく方法は、ない。少なくとも予測することはできない。私たちのすべての行動は、全知全能の神によって定められているのだから、この世のすべては全知全能の神の分身。折り紙で作られた人形と一緒。綺麗に折ったか汚く折ったかなど、自由自在で、だからといって綺麗に折られたものを残すとは限らない。

神の意図を知ることも予測することもできない。できるのは、想像することだけ。

人間の感情で、もっとも強いのは、憎悪。そのほかのすべての感情は、憎悪から生まれる。憎悪を伴わない感情などない。